ideomics

オブジェクト思考ブロギング

「パタゴニア」 ブルース・チャトウィン

チャトウィンを旅人というのは不適切であろう。彼は定まった家を持って旅に「出かける」というあり方ではなく、むしろ移動し続けるというあり方を選んだ。ある人は彼をベドウィンとか遊牧民といった言葉で表現する。しかし、それは適切な言葉だろうか?ベド…

「新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に」 小林弘人

メディア再編やウェブメディアVSマスメディアといった議論が盛んだが、これは紙媒体の経験者(自称メディア野郎)がウェブメディアについて語ったもの。ワイアードやサイゾーといった紙媒体(雑誌)の編集をやり、その後ウェブ上のメディアを立ち上げたらし…

「ニューヨーク流たった5人の大きな会社」 神谷秀樹

「バンカー」という言葉に憧れを抱くようになったのはいつからだろうか。Bankerという綴りには、銀行員という日本語とは違った趣がある。・・・クラシカルな家具をしつらえた落ち着いた部屋で、顧客の声に耳をかたむける。豪華ではないもののしつらえの良い…

TVゲーム ・・・ 「ユリイカ2006年6月 特集 任天堂 Nintendo」

ちょっと昔の号だけど、澤野さんという方の「DSの思想」というエッセイが面白かった。いわく、任天堂とソニーやマイクロソフトは競合として捉えられているが、任天堂の真の敵は「ゲーム有害論」であった。オモチャメーカーとしての任天堂は、家電メーカー…

「グレングールド、音楽、精神」 ジェフリー・ペイザント

「あなたの本によっては、私は自分のことがよくわかったように思う。」グールドが死ぬ数時間前に著者ペイザントにこう言ったと伝えられている。 グレン・グールドのバッハ、特にゴルドベルク変奏曲(1981年録音)は世界に大きな感銘を与えたが、奇抜な行動や詩…

"Built to Last" James C. Collins

邦題ビジョナリーカンパニー長く続く企業に共通する性質を抽出し、きれいに文章に構造化した古典的な名著である。この本から、コアバリュー、ビジョンというものがいかに企業(ないし組織)にとって重要かという考え方が広まったのは、かなり有名。個人的に…

「沖縄文化論―忘れられた日本」 岡本太郎

素晴らしい紀行文学。こいつは面白い。 団塊世代退職を見込んで旅行業界ががんばってて、それに応じて紀行文学や旅系の雑誌が元気あるみたいだけど、思わぬ伏兵。ごぞんじ太郎さんが、沖縄を旅した際の印象を綴るエッセイだが、込められたエネルギー、文章、…

「すべての女は美しい」 荒木経惟

たぶん自分とは対角線の位置にいるからだろうか、アラーキーにはどうしても惹かれてしまう。色んな写真があるけれど、彼にとって中心となる「女」というのに、一番ダイレクトな文章で付き合ってみたのがこの写真+テクスト。被写体の人たちは、きっと町にい…

「千年、働いてきました - 老舗企業大国ニッポン」 野村進

少し前に話題になった新書。老舗に注目した著者のセンスも素敵だし、個々の企業の製品もなかなか興味惹かれるのだけれど、彼の分析で、 「(一部の)老舗の鍵は婿養子」 というのが一番面白かった。創業者はえてして自分の息子に会社を継がせたがる傾向があ…

「デザインの原形」 深澤直人、原研哉、佐藤卓

普遍的なデザインを探求していくと、こういったモノに出会う瞬間があるのかもしれない。無限通りあるように思えるデザインにも、実は「正解」があるのではないか。何か1つの形に収束するのではないか。そんな風に感じさせてくれるプロダクトが世の中には、…

「日の名残」 カズオ・イシグロ

貴族がいた時代に戻りたいとは思わないけれど、貴族のいた時代の空気を感じてみたい。綺麗な庭園と紅茶の香る雰囲気を味わいたい。そんな期待に応えてくれる小説。↓の通り、ある執事の回想録として書かれた小説である。作家は実際に貴族社会で生きた人間では…

学問と教養の間に − 「十二世紀ルネサンス」 チャールズ・ハスキンズ

ルネサンスというと、レオナルドやミケランジェロを中心とする14世紀前後のイタリアルネサンスを指すことが多いが、これは必ずしも真ではない。なぜなら、12世紀にもそれに匹敵する「ルネサンス(再興)」があったから。そんな挑戦的な内容である(1920年代…

私は政治哲学者ではありません − 「暴力について・・・共和国の危機」 ハンナ・アレント

彼女はかつて、あるインタビューでこう言った。「私は政治哲学者ではありません。」ハイデガー、ヤスパースと哲学真っ只中で学生生活を送り、一般に政治理論家として知られる彼女である。しかし、彼女が大切にしていたのは、政治にまつわる普遍的な理論や正…

思想としてのプロダクト − 「デザインのデザイン」 原研哉

デザインとは、生活文化の探求だ。何かを為すというより、何かを考えること。何かを作るというより、何かを探すこと。・・・デザインという言葉の通来の意味を、飄々と流していく。原研哉は思想家とか詩人と言われるカテゴリーの人間なのだなと思った。かっ…

アングロサクソンに咲いた華 − "Only Yesterday" Frederick L. Allen

「ギリシアは哲学を、ローマは法律を、アングロサクソンは市民的自由を生んだ」とは至言である。市民的自由の中核として、言論の自由や言論による公的空間を挙げるならば、その具体として、「アングロサクソンはジャーナリズムを生んだ」と言い換えても良い…

政治の無形文化財 − 「失われた民主主義」 シーダ・スコッチポル

20世紀初頭まで機能していた、階級や所得を超えた中間団体や結社が徐々に衰退してきて、専門家が経営するシンクタンクやNPOが増えてきたという物語を、実証的に描いている。そんなアメリカの政治文化の変遷を論じたもの。前者は、わかりやすく言うとフリ…

2009年上半期に読んだ本ベスト5

★失われた民主主義―メンバーシップからマネージメントへ シーダ・スコッチポル 慶應義塾大学出版会 (2007/9/20) ★Only Yesterday - An Informal History of the 1920's Frederick L. Allen Harper Perennial Modern Classics(2000/7/25) ★デザインのデザイン…

「現代語訳 学問のすすめ」 福澤諭吉、斎藤孝

明治維新の人材百花繚乱。この時代の人物で誰が好きかと尋ねれば、その人物のおおよそがわかるというものだ。ある友人は勝海舟と答え、ある友人は渋沢栄一と答え、ある友人は坂本竜馬と応える。自分の場合は、文句無く福澤諭吉である。もちろん、壱萬円札の…

「ポスト消費社会のゆくえ」 辻井喬・上野千鶴子

セゾングループの総帥であった堤清二と上野千鶴子の対話編。上野千鶴子は、「セゾンの発想」という本も上梓しているくらいで、セゾンに対する知識はとても深い。基本的には、セゾングループの栄光と挫折への回顧と反省、分析である。セゾンという「文化」を…

ユリイカ2009年6月号 特集レム・コールハース

コールハースを十全に語ることは、無謀である。けれど、今回の特集は色んな視点からの分析やコメントで、かなり見通しがいい。コールハースはオランダ出身の建築家だが、ジャーナリストや映画のシナリオライターといった職歴があり、著作によって名を上げ、…

「ケータイ小説的」 速水健朗

ケータイ小説の隆盛に、ヤンキー文化の再興を見る。というのがおおまかな趣旨。ケータイ小説の特徴である、ティーン女子の主人公・妊娠・中絶・DV・別れ・いじめ・フィクションであるけど事実と主張すること、といった要素が、1990年頃まで流行ったレディ…

「ヤンキー文化論序説」 五十嵐太郎

日本人を大雑把に3つに分けると、ミーハー、ヤンキー、オタクである。という意見があったが、厳密さはともかくとして、なかなか言いえて妙だと思った記憶がある。 ミーハー(おそらく自分はここのグループだと思うが)やオタクといったグループには、自分達…

「思想としてのパソコン」 西垣通

コンピュータ史上における重要な論文をいくつか翻訳したアンソロジー。現代のPCというものが、どのような背景で生まれてきたかに焦点を当てて並べている。もともとコンピュータの開発は、計算機械(computationするもの)として始まる。それから、人間のよ…

「サマンサタバサ 世界ブランドをつくる」 寺田和正

最近渋谷の109へ「観光」する外人が多い。とどっかの記事。ほんとかどうかわからないが、109が体現する服飾文化、そして、ビジネスモデルが結構注目されているらしい。ビジネスモデル・・・あるブランドのヘビーユーザーが、ショップの店員となり、ショップ…