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オブジェクト思考ブロギング

誓約の制約

古の賢者たちは、かつてのローマについてこう伝えている。
エトルリアには技術において、ギリシャには学芸において、ガリアには体格において、カルタゴには商売において劣るが、神々への敬虔さにおいてローマは他の国々のどこにも負けない」と。しかし、ローマの神々とは、彼らだけに限られるものではない。彼らの敬虔さとは、神々の前でなされる誓いの神聖さであり、誓いに殉じるローマの気質を伝えているのではないだろうか。

 

「レークスは、レゲレlegere(もともとは「述べる」、ギリシア語のレゲインlegeinを参照)から派生しており、法律ラテン語では「制定法」(公的なレークス、レークス・プーブリカ lex publica)だけでなく「私的な言明による法定立」(私的なレークス、レークス・プリウァータ lex privata)も意味した。古拙な時代では、レークス・マンキピオー・ディクタは「言明」(ヌンクパティオnuncupatio)とも言われた。・・・十二表法 (6,1) は、以下の通り定めていた。「ある者が拘束行為または握取行為を行なおうとするときは、舌で言明したことが有効な法となる。」(ウルリッヒ・マンテ『ローマ法の歴史』P40)

 

神々の前で誓いの言葉を声に出すことは、
神々に委託した神託の言葉として、
紙々に委託した信託の文字よりも重い。
なぜなら、神々は紙々に勝るものであり、
息と声は、文字よりもその人の内臓から来るものであるから。
神々の法廷は、紙々の法典に先んじる。
神託は、 神々から託されたものではなく、 神々に託すものとなる。
oralityとはoracleからくるものであり、神託 (Oracle) は太陽 (Sun) さえも飲み込む。

 

「こうしてすべての人々の心が敬虔の念で満たされると、法律や罰則に対する恐怖にかわって、信義と誓約が市民を支配した。ローマ人がみな、この王を唯一の範例のようにして美風を確立すると、近隣諸国の人々も・・・敬意を持って接してくるようになった。」(リウィウス『ローマ建国以来の歴史』第1巻21)

 

"lex rex"
神との契約でもなく、神々から託されたものでもなく、神々に託すもの・・・私たちもその残り香をかすかに知っている。結婚式には、教会だけには収まらない神託の残り香がある。確かに役所に届ける紙は政府の助けを呼ぶ。しかし、人々は誓いの言葉をより重んじている。神々の法廷は、紙々の法典に先んじる、と。実のところ、教会式とはローマの神々の香りを伝える法廷の儀式なのではないだろうか。

 

法廷に響く声は、polisとcivitasを囲む城壁に響き渡った。その声は山々にこだましたが、やがて空の中に消え去り、風の音だけが今は聞こえる。かろうじて残された文字たちのささやき声が、その後に法と呼ばれ、今も法廷にこだまする。教会式にもこだまする。風の音からささやき声を聴く人々がいる。こだまでしょうか。いいえ、だれでも。