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オブジェクト思考ブロギング

「自然な建築」 隈研吾

隈研吾栄光学園卒であり、同門ということになるのだが、そのせいか共感する点が多い気がする。

この本は下の商品説明の通り、アンチRCであり、自然素材を称揚している。また、RCというある種普遍的な適応力をもつツヨーイ「生き物」が、場所のもつ性格や独自性を無視して、ぼこぼこ生えて(栄えて)くるから、建築のローカリティが失われたとも主張している※。ブラックバスアメリカザリガニのようだ。

彼はその傾向に立ち向かうべく、なるべく、いわゆる自然素材と呼ばれるものだけを使って建築をつくろうとする。本書は、いくつかのプロジェクトが紹介されており、その技術や工法のディテールがなかなか面白いと思う。例えば、竹の筒の中にコンクリート流して構造体をつくるとか、和紙にこんにゃくの溶液塗って耐性を上げるとか。石を格子型に組み上げる構造計算というのも興味深い。

「負ける建築」「反オブジェクト」といった著作の頃から、主流派に対する反抗心に満ちていたが、今回は概念的なものから、物質的なものにテーマが移ってきている。前のはアンチテーゼ色が強かったが、今作にいたって、テーゼ色の方が強くなった印象。反抗期を脱したかな、みたいな。

前の著作もそれなりに面白かったが、今回のが個人的にはベスト。概念的なものやアンチテーゼなら批評家にもできるが、やはり物質的なもの・技術的なもの・テーゼ的なものは、現場にも触れ合っている作家ならではだと思うから。


※コンクリート主体の建築家安藤忠雄もcritical regionalismと言われており、場所の独自性や性格を良く考えている作家であると解釈されている以上、RCそのものが場所の性質を殺すわけではないだろうとは思うが。