ideomics

オブジェクト思考ブロギング

東京大学神経科学部附属保育園:教育学は自然科学か?

学問は進歩したと言うなれど、未だ神学論争の冷めやらぬ領域はあるもので、そこでは宗教的情熱とノーエビデンスを持って戦う猛者たちに溢れている。多くの戦いは調停することはできず、異端審問と敵か味方の二元論が繰り返される。お察しの通り、教育、特に幼児の子育てという聖域。



http://www.kosovo.net/history.htmlより)


幾千もの「経験」が語られるものの、なかなか構造化された「ケース」には成りにくく、いわんや「データ」とまで構造化されることは少ない。というかかなり難しい。RCT(randomized controlled trial)を行うことはさらに難しく、Nを集めることも大変だ。


しかし本当に、ケース化、データ化、RCTは全く不可能なのだろうか。ふと保育園を振り返ってみると、意外と自分もカリキュラム内容は把握しきっているわけでもないし、内容自体はそこまで確立されたものではない。とすると、もしかしたら神経科学のフィールドワークの余地は結構大きかったりするかもしれない。非侵襲的なRCTだったら、それなりに理解を得られるのではなかろうか。というのも、保育園は絶対的に足りておらず、かつ知育的な要素のものは更に少ないので、それが提供できれば、フィールドワークと「バーター」しうるから。



http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/jidofuku/data05843.shtmlより)


神経科学に進んだは良いものの、実際のポストは少ない。PhDを取った優秀な人が多くいる一方で、彼ら彼女らを活かす道が割合と少ない。一方で保育園は人手が足りず、かつ知育的な保育のニーズが潜在的には十分にある。今のコンベンショナルな保育士とは違ったニューロサイエンス経由のイノベーションの余地があったりするのではなかろうか。大学附属病院ならぬ大学附属保育園。RCTはあるけど、代わりに知育が提供される。しかも大学で。となれば、それなりにニーズはあるかも。特にアカデミアで働く男女にとっては。医療と呼ばれる分野が医学のアプリケーションであるならば、教育と言われる分野がニューロサイエンスのアプリケーションで良いのではないかと思ったり。


教育学=サイエンス(特にニューロサイエンス)+フィールドワーク(臨床研究)+思想(理論)。ニューロサイエンスは、理学部、医学部でなされていることが多いけど、ほんとは教育学部だって主要なプレイヤーのはずなのだ。だから、↑のような臨床研究(フィールドワーク、RCT)は言うまでもなく、MRIがもっともっと登場したら良いはずだし、旧帝大レベルであれば、マウスを使った、学習や記憶や情動の研究をしたら良いはずなのかもしれない。フォン・ノイマンならいざ知らず、観念・理論だけで意味のある仕事をするのはなかなか困難*1



http://www.activexray.com/subpage/radiographic_pics.htmより)


あまり現状を知らないのだが、もしかしたらアメリカの教育学部なんかはそんな形なのかもしれない(情報求む)。少なくとも、心理学は古典的な心理学ではなく、認知科学的な意味での心理学になっているようなので*2教育学部もそうなっているのかも。ともあれ、将来的には、研究志向の総合大学で教育学部と言えば、マウスとMRIは必須な設備になるに違いない。fMRIの主な舞台は、医学から教育へ移ったりして。



****************

2013年4月21日文末など小改訂
2014年1月16日題名改訂