21_21 DESIGN SIGHT "POST FOSSIL"
先週末友人と21_21 DESIGN SIGHTの企画展"POST FOSSIL"に。
リー・エデルコートなるオランダのディレクター/キュレーターが、POST FOSSIL=化石燃料後、というコンセプトでプロダクト/アート作品をセレクトし、安藤忠雄のコンクリート+鉄の建物に並べている。
ひとつひとつの作品に関しては、一部の除いてあまり面白くなかったが、全てを一巡して見えてくるコンセプトは、時代の流れの表象としてなかなか面白いものがあった。それにしても、オランダ人てのは、コンセプトありきで、ディテールとか個々の作品性みたいのは、あまり興味がないのかしら。
全体に通底しているコンセプトとしては、
①生き物の権利
デザインの潮流に、「エコ」というのがあって、環境に優しい=絵ベルギー消費が少ない・CO2排出量が少ない、という意味でのエコがメインストリームとなりつつあるが、こちらの「エコ」はもっと、倫理的な「エコ」。例えば、牛の皮を、牛の形そのままでソファにしたものや、木の枝を落とさずに、枝を脚にした机など。
前者が、人間にとっての環境を整えるという意味で功利主義的だが、後者は、動物など生き物と人間が対等な(に近い)ものとして、(環境負荷とは関係なく)共生しようという意思。言うなれば、もののけ姫の世界観。ジブリが受けるのは、アニメのクオリティもさることながら、こういった思想的な部分が、色んな人に新しくかつアクチュアリティがあるんだろう。
思想界でも、他者の権利(人間以外の者も含め)は結構面白いトピック。この辺は加藤尚武(加藤尚武 - Wikipedia)の議論なんかを参照したい。
②新しい素材の追求
例えば、腐食分解されるプラスチックでつくったプランターや、ウールで作ったプランター(こちらも分解される)。↑でいう前者の功利主義的観点ではあるが、素材の開発という意味では、常に革新の余地がある。
他には、発泡スチロールやコルクを、イスや机としてリファインしたもの。身近な素材を、別な形に転用していく試みも、シンプルだが面白い。今までゴミとして扱われていた素材を、有用な形で応用しようとする試みは、功利的にも有用だ。
③生物の形、有機的な形
展覧会を通じて、生き物の形をかたどった作品が多かった。あたかもアールヌーヴォーが再来したような感じ。アールヌーヴォーが古典主義への反動だったとするならば、こちらはモダニズムやミニマリズムへの反動か。
あとプラスして、建物との対比も興味深い。かたや、鉄とコンクリートで、ミニマルな緊張感を追求したモダンな安藤忠雄建築で、かたや、それに対するアンチテーゼともとれる、自然素材を使用し、モダニティ後の世界を描こうとするプロダクト群。ミニマルな抽象性やモダニズムを追求していかんばかりに、消失まで漸近するかのように地中に埋もれる建築と、素材の荒々しさで存在を強調するプロダクト群。安直な対比と言ってしまえば、それまでだが。
モダニティへの反駁は、ポストモダンと言われる運動にせよ、近代の超克と言われる運動にせよ、色んなものがあったと思われるが、そういった思想/運動の一環として見るならば、単なるデザインの展示に留まらず、思潮の流れという意味で、得るところがあるかもしれない。