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オブジェクト思考ブロギング

遺伝子組み換えのコストダウンによるベンチャーラッシュ?(The Economist)

ちょっと前のEconomistに、DNAの組み換え技術のコストダウンが新しいバイオベンチャー熱を生み出すかもしれないという記事があった。


DNAの組み換え技術がオーダー単位で安くなることにより、手軽に生物の遺伝子を「プログラミング」することができるようになり、自宅で起業といったことも可能になるだろうという内容。


可能性としては、農産物、畜産物、魚介類の品種改良から、薬や有用な物質の生産工場として細胞を利用することや、微生物の改造による廃棄物分解などたくさんありそうだ。もしかしたら、我々がかつてプラモデルで遊んだように、将来の子供達は、生き物のDNAをいじって遊ぶようになるかもしれない。


ITにベンチャーがひしめいた理由の一部として、初期投資の少なさや、ガレージでできる場所の選ばなさ、人数がさほどいらないといった点があるが、他の産業ではなかなかそのような条件は揃いにくい。クリーンテックやバイオテクノロジーといっても、装備や投資の関係上、なかなか雨後の竹の子のようには幾多の会社ができるというのは難しい。


逆にそのような条件が揃えば、IT起業熱のごとくまたベンチャー企業がたくさんできるのではないか、そして、DNAの組み換え技術はその条件と、潜在的な可能性の2つを秘めているのではないか、と。ガレージベースで開始できる手軽さってのは、起業文化の裾野を広げる大切な要素だと思う。逆に言うと、そういった環境を整備するってのは、メタ起業的な視点かもしれない。


もちろん、危険性もたくさんあって、一番わかりやすいのはウイルスや細菌が改造されてテロに使われること。他にも色々ありそうだし、相当倫理的な問題が立ち上がるだろうが、ともあれ、なかなか面白そうである。まぁバイオテクノロジーは何回も騒がれつつも、よく失望されてきた歴史はあるのだけれど。


しかし、エコノミストは記事がとても冷静である。あんま浮かれたり、過度に批判的になったりしないで、だいたい(俺個人から見てだけど)妥当かつ鋭いな印象。そして、記者が少ないわりには、分野や地理的なカバーが相当に広い。大英帝国時代からのキャリアをひしひしと感じます。なんか、英国の知性ってすごいなぁみたいな。駒場の某人気ゼミがテキストにするだけあるわ。