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サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「民主主義」と「無知の智」? - 「社会科学」x「動物実験」

Science, 334;1578-1580 (16 December 2011)
Uninformed Individuals Promote Democratic Consensus in Animal Groups


(↑の解説:Can Ignorance Promote Democracy?


人間社会でも、声の大きなマイノリティが政治的な力を持ち、声の小さなサイレントマジョリティを制して、集団としての意志決定をマイノリティの望む方向に持って行くことがある。場合によっては集団の利益になることもあるので、一概でダメだというわけではないけど、帰結とは別に手続き的な「民主的な決定」という意味では問題がある。


この「声の大きなマイノリティ+サイレントマジョリティ」という集団に、「その集団でなされている意志決定や、他の個体の志向を知らない個体」群を投入すると、集団の意志決定が、サイレントマジョリティの志向と一致する傾向になる。というのをコンピュータ・シミュレーションと魚を使った実験を用いて示しているのが↑。



(http://fish.dnr.cornell.edu/nyfish/Cyprinidae/golden_shiner.htmlより)


正直この報告だけだと、↑の命題がきちんと示されている感じはしない。でも、人間社会の運営の仕方に示唆的*1。「空気読まないやつ」「集団の文化への知識があんまりないやつ」が民主制には大事っていう示唆なのかもしれない。『「みんなの意見」は案外正しい』(ジェームズ・スロウィッキー)*2にも、情報のやりとりをしないことが、「正しい決定」に大事で、多様性、独立性、分散性が重要とあったけど、動物使って示そうとしてるとこが面白い。


生態学を、人間社会の社会実験みたいな感じで眼差す。人間社会の中での社会実験はなかなかできないけど、(自然科学よろしく)「動物実験」である程度代替していくのは、ひとつの手だ。もちろんどれだけ人間に応用できるかは難しいところ。しかし、

The test of all knowledge is experiment. Experiment is the sole judge of scientific “truth”. - Richard Feynman

という言葉の通り、実験による実証がもう少し大事にされても良いかなとも思う。いままで社会科学と言われてきたものに、どんどん動物実験を導入していった新しい姿が、もしかしたら「21世紀の科学」の中心になるのかもしれない。21世紀のサイエンスのメインディッシュは、「社会科学」x「動物実験」だったりして*3



(Cute Mouse Pictures and Imagesより)


生態学x社会科学で言うと、


"Complex systems: Ecology for bankers" (Nature, 2008)
も興味深かった。誰が生態学の知見を銀行家に「翻訳」していくのかって話はあるけど。逆も然り。


"Systemic risk in banking ecosystems" (Nature, 2011)
イングランド銀行xオックスフォード大学動物学。面白そうだけど、でも難しすぎて全然わからなかった・・・金融関係の人ならわかるのかしら。


"Strong contributors to network persistence are the most vulnerable to extinction" (Nature, 2011)
生態学ビジネススクールコントリビューションのジレンマ / Contributor's dilemma - ideomics参照。


とか。


このあたりのコラボレーションは、やり方として結構狙い目なんじゃないかなと思ったり。個人的に興味あるだけかもしれないけど。

*1:この報告の著者らは明らかに人間社会への示唆をメインの目的にしている

*2:http://amzn.to/y3jdMR

*3:まぁそもそも理系・文系という区別自体がイマイチだけど。批評・政策における科学・技術 - ideomics参照