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ideomics

サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

"Disruptee's Dilemma": 機械式時計のカウンター

イノベーションのジレンマ」って、機能が飽和(オーバースペック)→破壊的テクノロジーみたいな話の中で、破壊的テクノロジーサイド(Disruptor)に立った/立ちましょう的な語り口が多いけど、破壊される方の立場(Disruptee?)から「防衛」を考えるとどうなるんだろうか。または、もっとシンプルにアナログからデジタルへの移行(例えば、カメラや書籍)の中で、アナログサイドに立って、その発展や生存を考えるとどうなるんだろうか。


クォーツが興隆した後の機械式時計の復権・見直しとか、機械式時計によるプレミアム市場の防衛って、何かしらの参考になる気がする。クオーツサイドから見た革命的な側面は、ハーバード・ビジネススクールケーススタディにもなっているとのことだが*1

"SEIKO quartz revolution"
Seiko Watch Corporation: Moving Upmarket - Harvard Business Review

この壊滅的打撃で絶滅せずに生き残って、しかもプレミアム感を出している一部のブランドはやはりすごいと思う。いくら元々ブランド力があったとしても、時間を測定するという機能から見ればかなり劣る上に、やたら高価なものを売り続けているのだから。転んでもただでは起きないどころか、より強固なプレミアムを獲得したっていうところに、もう少し一般化できないものかと思ったりするわけだ。


クォーツショックで壊滅しかけた機械式時計が、再定義されてプレミアムマーケットとして確立された。みたいな現象を、もう少し一般化できないものか。あるいは、「イノベーションのジレンマ」を破壊的テクノロジーサイドからではなく、破壊されそうなサイドから見た場合の戦略として。アップルみたいに、自ら破壊的テクノロジーを開発して自製品をカニバっていくのは、おそらく王道解なんだろうけど、オルタナティブとしてないものか。電気自動車がもっとコストカットされると、ガソリン車は似たようなシナリオかもしれないし、電子書籍と紙書籍は言うに及ばず。コンピュータに関しても、そのうち可能性があるかも。いろいろなテクノロジー業界に応用可能な「方程式」みたいにできないものか。


古いテクノロジーは、放っておいても、一部のコアなファンは残るだろうし、骨董としての価値は一部のコミュニティでは生き続け、場合によっては「美術」的な扱いを受ける*2真空管アンプやLPレコードあたりはそういう歴史。でも、機械式時計のように「マーケット」と言えるレベルの規模感を持つには、ちょっとひねりや戦略が必要そうだ。もちろん、よく製造業で言うようなスケール十分な「経済的」話にはなりきらないだろうけど。


スイスに機械式の部品業者を集結させて水平統合したのは、クォーツショック後か前か忘れたけど、垂直統合とかクラスター化とか、それに近い打ち手が結局必要になるんだろうか。あと、ポルシェクラブみたいなクローズドな社交の場や、アップルストアみたいに販売までの購入体験の一貫したデザインみたいなのもありなのかもしれない。


カメラの世界は↑の議論がちょうど当てはまりそうな世界。電子書籍がデフォルトになったときの紙書籍のポジショニングとかも。機械式時計に倣えば、紙書籍の製造・販売・ポジショニングでの一部の解が見えてくるかも。となると、紙質とかは結構大事で、良質な紙のチャネルを抑えることなど必要かも。情報材というよりは、物理的なプロダクトとしてのクオリティも考える。あるいは、物理的な形を活かした「サービス」の開発と製品開発への統合も必要かもしれない(垂直統合的な)。例えば、Books x Exchange = ?? - ideomics, 「ポスト蔦谷書店」の書店の形 - ideomicsのような。書店もアップルストアみたいな直販店が主流になったりして。岩波や筑摩なら、製品自体の価値を高めることで、高級志向でやってやれないこともないだろうし、もっとサービスに工夫できれば、新興勢力も希望あるかも。


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"3代目のiPadを見て再度考える:アップルの宿命"
3代目のiPadを見て再度考える:アップルの宿命 | Naofumi Kagami
は別な解答を示唆している。

「Siriが戦略的に非常に重要なのは、イノベーションの余地を新たに生んでいるという点です」

イノベーションの「余地」を新しく提示していくってのは、ジレンマ解決の別なソリューションかも。まだまだ機能は飽和(オーバースペック)してませんよ。ってメッセージを、β版的なものを出すことであらかじめ提示しておく。ゲームのルールを少しずつずらしていくことで、disruptiveな勢力から逃げ切る。


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2013年7月4日追記

イノベーションのジレンマにおけるdisruptorにはdemocratizeというイメージがふさわしいとすると、disrutee(破壊される側)の戦略のイメージは"aristocratize"という言葉になるのかも。だから何なんだという話だが。

*1:thanks to @hondahajime418

*2:家電量販店 - ideomics