ideomics

オブジェクト思考ブロギング

2次元のアニミズム

オタクの文化で一番すごいと思うのは、二次元のものを生きているかのように扱うことができるとこ。アニメのキャラクターを彼女ですと言ってみたり。そのような2次元をそのまま愛でる感性はなかなか得られるものじゃない*1。アニメーションとはまさにアニミズムだということが痛感できる。ディズニーにせよジブリにせよアニメーションとは絵をいかに「生き生きと」動かすかという点に注力しており、ストーリーよりもそこが最優先だと聞く。


非生物を生物のように愛でる感性ってのは、古くて新しい。というのは古代の人間にも非生物を生物とみなすようなアニミズムがあり、それが現代のアニメーションオタクの感性と接続するような気がするから。原始的なアニミズムへの回帰でもあり、新しい再生でもある。アニミズムルネサンス?「擬人化」という理解の仕方があるけど、ある意味これは古来からあるアニミズム人文主義的に再生したものと言えるかもしれない。animate = 命を吹き込むこと。


映画の3Dといい、PC画面のインターフェイスの立体化といい、時代は画像の3次元化に向かっている。遠近法の伝統からさらに3Dへ。ハリウッドやアップルよろしく3D志向でがんばるのはひとつの手かもしれないが、二次元をそのまま愛でる感性を大事にするのも一つの戦略としてありうるかも。平面世界に対する3D植民地主義に抗して。


大和絵や浮世絵に関する猪子さん(チームラボ)の論考は参考になる。


「日本文化の強みをゲームに活かそう! 日本の美術表現で世界に勝つ【CEDEC 2011】」
http://www.famitsu.com/news/201109/08049840.html

マリオ、ドラクエの2次元表現から、大和絵の2次元表現にさかのぼる。正確に言うと2次元じゃない。独特の空間表現(レイヤー)である、と。

twitterの@inokobotさんに前あったエントリ

西洋画は視点(遠近法)があるので、鑑賞者の立場を必要とし、画の中に入れない。モナリザには入れない。大和絵は視点がないので、画の中に移入しても、見ている風景が変わらず、鑑賞できる。屏風には入れる

も興味深い。


2次元と言えば、3次元的な志向へと向かう絵画をいかに2次元の世界で表現するかを苦心した作家がいた。アンリ・マチスマチスは絵画を脱芸術化し、de-signへと向かったと同時に*2、2次元の表現という地平も開いた。このマチスの平面性は、今の3D志向と対極的で、参考になりそう。



このあたりの表現もいいなあ。


絵にせよディスプレイの表示にせよ、現実的には2次元であるものを、どうにか3次元に見せようとするか、あるいは、2次元のまま愛でようとするか。より一般化して言うと、異文化に接触したとき、その文化を自文化に引きつけて考えようとするか、あるいは、その文化自体を愛でようとするか。異文化を、植民地にするか、あるいは受容・享受するか。


もっと言うなら、自分を2次元化してみようと試みるなんてこともありうるかもしれない。ギャルの化粧がますますアニメキャラ的に、2次元化していくのは結構気になる。最近のプリクラはほんと2次元化してる。マサイに嫁いだ日本人女性という話を聞いて驚いたことがあるが、2次元世界に移住するとなったら、こりゃマサイどこの話じゃない。


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ユマニスム(人文主義)からマシニズム(機械主義)へ - ideomicsにおけるマシニズムを考える。「人間=機械」論の方程式の左右を入れ替えると、「機械=人間」論。ヒト=モノ→モノ=ヒト。マシニズム2.0においては、モノや機械に「ヒト」を見出すこと。擬人化を比喩レベルではなく、本気で「擬人化」すること。原始的なアニミズムを新しい形で再生=ルネサンスすること。ルンバを見てると、思わず生きてるような気がしてくるが*3、アニメーションを愛でる人たちはこれのさらに先を行っている。


今まで見た夢の中の最も好きなもののひとつとして、「年取った機械工が、退役を翌日に控える産業機械と酒を酌み交わす」という映像がある。このあたりの感性を表現するのって小説じゃたぶん足りなくて、映画じゃ伝わりにくく、おそらくマンガやアニメーションが一番ふさわしい。だって「擬人化」しやすいから。アニメーション=アニミズム。。「鉄腕アトム」とともに拡張される人権概念。


その先を行っているのがギャルという言い方も可能かもしれない。ギャルの化粧がますますアニメキャラ的に、2次元化するにつれ、自らを非生物化しているように思える。ポップな美容整形=身体改造といい、ギャルたちはオタクたちのさらに先を行き、マシニズム3.0を先取りしているのかもしれない。機械=異文化、人間=自文化とすれば、彼女たちは先駆的な移住者だ。

*1:とはいえ、フィギュアといった3次元体や3Dのボーカロイドなど、当てはまらない点も多いんだけど

*2:マチス:絵画の脱芸術化 - ideomics

*3:ルンバを買った - ideomics