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サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「感覚をデザインする」…空調アートという可能性

そろそろ家の加湿器を出動させようと思う。ただ水を蒸気にして散布するだけの単純な機械だが、それだけで急に過ごしやすくなる。吹き上がる蒸気を見る。蒸気をささやかに感じる。なかなかのインスタレーション


だいぶ昔になるが、ある人との雑談を思い出す。彼は建築士だったけど、いわゆる間取りや構造などの設計ではあまり食えず、設備設計はあまり注目されていないからと目をつけたら、結構あたったといった趣旨の話だった。「住まう」ということをトータルに考えるならば、建材や間取りは間違いなく重要だが、水周りや空調・換気・音響もとても大事。目には見えにくいけれど、特に湿度・温度・空気の流れはかなり快・不快に直結してくる。化学物質・ほこりなどのコントロールも意識されないレベルで感覚に働きかける。


吉岡徳仁のよく使う言葉に、「感覚をデザインする」というフレーズがある。基本的には家具(のようなもの)を通して、物理的な実体のあるものを通しての感覚ということだろうが、空調や採光なんかもダイレクトに感覚をデザインするものだ。彼がデザインするものは、椅子や照明といった家具が多いが、今後はもっと設備的なものへと領域を拡大するのもひとつの可能性である。ちょい前のネイチャーセンス展のインスタレーション「Snow」を見て、そう思った。


Tokujin Yoshioka - Snow, "Artficial Reality" Installation 2007-2010


霧をつくったり、温度差をつくったり、風をつくったり、はたまた雪をつくったり・・・建築の文脈においても、内部空間の心地よさを追求するならば*1、亜流かもしれないが発展の可能性がある分野かもしれない。オラファー・エリアソンのウェザー・プロジェクトも示唆的である*2。採光・照明はこれまでもメインのトピックであったろうし*3、音響なんかは音楽ホール設計で既に追求されているテーマではあろうけれど。


とはいえ、メインはいわゆる「設備機器屋」や「家電屋」が担うことになるんだろう。最近特に面白いなと思ったのは、バルミューダデザインのグリーンファン。

バルミューダ | GreenFan Japan(グリーンファンジャパン)| 自然界の風を再現する扇風機


羽の形を変えて、風をぶつけ合うことで、従来の扇風機のような単調な風ではない自然な風に近づけたらしい。実際使ってみたことないけど、風までデザインしうるとは!と感動。


あとは、プラズマクラスターイオン(シャープ)やナノイー(パナソニック)。加湿器の発展バージョンみたいなもんだが、これも目には見えない空気のデザインという意味で面白い。扇風機つながりでは、ダイソンのエアマルチプライアーなんかもそう。家電の中では古典とも言えるエアコンも、風の送り方や、何かしらの手段で、「空気のデザイン」に大きな力を発揮してくれるかもしれない。


住宅の機能をどんどん家電が負っていくとするならば、家=巨大な家電とも言える。電気自動車が台頭すると、自動車=おっきな家電という位置づけになるのだろうけれど、最近パナソニックやら家電メーカーがソーラーパネル燃料電池などを通してますます住宅でのプレゼンスを上げて来ている。パナソニックパナホームというハウスメーカーを持っているが、そのうち家電メーカー各社が高機能住宅を直接販売する日も遠くないかもしれない。


あるいは、もっと文化的な方向にも。家具がミラノ・サローネなんかで展示の対象となるように、家電や住宅設備もそのうち、ミラノ・サローネを侵食し始めるかもしれない。吉岡徳仁のような感性を持った人が家電領域にも参入するならば、「空気のデザイン」の手段として、家電もアートの領域に片足を突っ込むことになるだろう。実際、スノッブ雑誌たるPENにおいて、家電特集号(2010年6月19日号)があったのは画期的だ。

*1:現代建築家コンセプトシリーズ - ideomics

*2:オラファー・エリアソン - Wikipedia

*3:だいぶ昔に友人が陰影礼賛をテーマに文化祭の発表をしていたのを思い出す