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サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

『君に友だちはいらない』 瀧本哲史著


思わず全文読み進める。面白い小説を読むような感覚。。。自分は大して経験もないけれど、チームを形成していくテクニック/テクノロジーとして、必要十分な要素が含まれていると感じてしまう。*1


ひとつひとつのパーツは、ウェブのライフハック的な記事やベストセラーで目にすることのある言説であるものの、そのまとめ方や、何より著者本人の言葉としてのリアリティがライフハック的な軽さと違って、説得力がある。著者の日本刀のように鋭く美しい知性が心地よい。当代切っての切れ者という感じ*2。物語、物語ることによってモチベーションに火をつけるテクニックも秀逸だと思う*3


こちらのインタビューに内容がまとまっている>
ルームシェアしたり、「いいね!」する友だちは、ほんとうの仲間なのだろうか?――世界が模倣したイノベイティブなチームの原型は、じつは60年前の日本にあった ~『君に友だちはいらない』著者・瀧本哲史・京大客員准教授インタビュー~ (1/2)


個人的に気になったのは、この本で主張されている「チームアプローチ」を取りうる「前提」は何だろうか、言い換えると、どういった人がこの「檄」に応答しうるんだろうか、というところ。というのも、ゲゼルシャフト的なチームの反対である馴れ合い・仲良しごっこに人が陥りがちなのは、何かしらの欲求や渇望の裏返しであり、その欲求や渇望がある程度解決されていないと、ここで主張されているようなゲゼルシャフト的なチームを構成できないのではないか(ゲゼルシャフトのはずのものも段々とゲマインシャフト化していきがちなのでは)、と思ってしまうから。


「人生を個人としてある程度完結できること」、あるいは/加えて、「チームとは別に『ホーム』があること」というのが、長期的に「チームアプローチ」が可能となる前提となるように感じた。個人としてある程度完結できる=他人の承認がそんなには要らない=自分で自分の存在を肯定できる、とすると、その特性は大人になって手に入れる人もいれば、発達の過程でかなり初期に運良く獲得できる人もいる。そういった人は幸いだ。


自己肯定感 - ideomics


著者のお父さんは心理学者ということだけれど、個人的には、お父さんの著者への接し方(より一般的に言えば育て方)について多いに興味を覚える。雰囲気やスタイルからは、相当なIQの外れ値を持った、いわゆるアスペルガー的な天才を感じるけれど、本人の資質だけではなく、ご両親の接し方のセンスもハイパフォーマンスに影響しているのではないかと推測してしまう(もちろん間違っているかもしれない)。


もし馴れ合う場所が他にあれば、ゲゼルシャフト的なチームではなれ合う必要はなくなるけど、なれ合う場所が他になければ、本来のゲゼルシャフトが段々馴れ合いになっていくこともあるだろう。漫画『ワンピース』に描かれている「仲間」を馴れ合いの要素が強いと批判的に見ているが、もしかすると、漫画『ワンピース』は、この「馴れ合い」の要素が受けているところかもしれない。海賊としてはチームアプローチが望ましいという批判は個人的に納得なものの、この漫画が受けている背景や欲望に対しては、より違うアプローチが必要かもしれないと思った。すなわち「ホーム」を形成するテクニカルなアプローチが。


親密圏のテクノロジー - ideomics


チーム・ビルディングならぬ、ホーム・ビルディング。

*1:この本ではチームアプローチという言葉を採用しているが、『プロジェクト・ジャパン - メタボリズムは語る』で言うところの、「プロジェクト」や「運動」といった言葉も想起する。『プロジェクト・ジャパン - メタボリズムは語る』 レム コールハース (著), ハンス ウルリッヒ オブリスト (著) - ideomics

*2:こういった鋭い知性に出会うと、ついついその対極にありうる鈍器のような知性って何だろうって思ってしまう。

*3:最近小説を読まないなーと思っていたけど、ある意味この本は昔で言うところの小説的な機能を果たしているような気がする