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オブジェクト思考ブロギング

『大奥』よしながふみ


漫画の『大奥』を今更ながら読んだ。これは凄い作品ですね!ジェンダー関係で百の理論や説を重ねるよりも、一気に男女の「違い」やgender/sexが宙吊りになった。もちろんドラマとしても面白い。読んだ後は、まさに"confused"。頭がクラクラして、何がなんだかわからなくなる。パラレルワールドに飛び込んだみたいだ。まさにフィクションの本領。フィクション=パラレルワールドとして「不思議の国のアリス」状態になったのは久しぶり。"alice in wonderland state":略してAWS


しかし、日本語で文字の書かれた漫画の層の厚みは凄すぎるわ・・・もう飽きたやろと思っても、どんどん面白いのが見つかって困る。そして、フィクションの力を改めて思い知る・・・よく言われることではあるが、文字通り時空を超えた旅行させてくれる。


自分でも、ジェンダー論的な意味で男性と女性を入れ替えたパラレルワールドを夢想してみたことがあるけど、現代の世界そのままで、別に面白くないし、単に入れ替えただけの話。大奥では、立場は入れ替えているものの、心情とかは作者が思う形としての女性性みたいのがダイレクトに発揮されていて(むしろダダ漏れというレベル)、それにある種の気持ち悪さがあるものの、より作品をconfusingなものにしている。(もちろんこのconfusingというのは褒め言葉


フィクションの玉座に座っているのは、今でも小説という文章の形式だろうけど、やはり漫画はより没入しやすくトリップしやすい。小説は情景や状態の描写に文章を使わざるをえないので、情報量が限られるしなかなか伝えづらい。それを逆手にとって、小説には想像力が云々といった論理もあり得ると思うけど、やはり自分の思っている形をよりうまく伝えるには絵が良いだろう(もちろん言葉の詩的な作用自体は他に代えがたい)。


漫画のデメリットとしては、読み手は楽なのだけど、書き手が大変というのがあるが、これをもっと楽にすることはできないものなんだろうか。ADOBEのソフトみたいな感じで、漫画を書くようなソフトウェアがあって、画材がオープンソースにデータベース化されていて、クレジットをつけながら使用できるようなイメージで。ソフトウェア+画材オープンソースDBがプラットフォームになって、アイデアがあればより書くまでのハードルを下げるイメージ。そこで成功してきたら、画材ソースの人と組んだり、ちゃんと画風を確立していくとか。これだけ良作が多いのだから、きっと氷山の下には更に更に良い物が眠っているのではないかと邪推してしまう。


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2012年10月28日追記

小説=コマンド入力 漫画=GUI みたいなイメージ。「玄人」以外には、漫画/GUIがわかりやすい。そして、漫画的な絵表現と文字の中間としての絵文字。絵文字の歴史ってよくわからないけど、アスキー顔文字や携帯的な絵文字ってどこが文化的オリジンなんだろう。smilyマークは1953年生まれで、1981年のIBM PCにはすでに組み込まれているとのこと*1。日本での普及は、イメージ的には、前者は2ちゃん、後者は女子高生・女子大生って感じだけど、どうなんだろうか。


平安時代のいつぞやかでは「ギャル文字」だった平仮名が市民権を得たように、絵文字もオフィシャルな市民権を得うるのか。かなり飛ばし気味に言えば、アルファベットとアルファベットベースの文化が表音文字の極北とすると、表意文字の極北としての絵文字は、それを補完しうるのかもしれない。というか、もはや文字かどうかなんてのが定義できなくなってくる。文字が溶け出す。前者の最大の果実のひとつが数学や物理学といった明晰で抽象的なシステムだとしたら、後者に対応するものって何なんだろうか。

*1:thanks to @gedankendingさん。Smiley - Wikipedia, the free encyclopedia参照