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オブジェクト思考ブロギング

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先日友人から、ヒトゲノム計画の意味について聞かれた。かなり巨額の投資をしているので、どのくらい役に立つのかという疑問が生じるが、結論から言うと、このプロジェクトによる技術革新で、色々な応用が見えてきている。

おおまかにはこちらを参照
ヒトゲノム計画 - Wikipedia



ヒトゲノムの配列(全長30億塩基)のだいたいのところが判明した。これ自体、単独で何かにそのまま役立つわけではないけど、この配列を読む作業(シークエンシングという)が洗練されたことで、シークエンシングのコストが大幅にダウン(例えば、2000年と2012年を比べると、コストは千万分の一くらいの値段に。今では50万くらいで全部読める)。シークエンシングが簡便になることで、応用が広がる。


例えば、遺伝子の配列で、病気のリスクや特徴、治療薬との相性が変わってくる。ガンの中でもある遺伝子変異があると、特定の抗がん剤に反応するとかしないとか。逆に副作用のリスクにもかかわってきたり。この辺りはまだ情報として出始めたばかりだけど、医療現場でもう使われている。医学へのインパクトは大きくて(というかゲノムへの理解なしには成り立たなくなるかと)、そのうち、個人個人で全ゲノム読むのが当たり前の時代になってくるかなと思ってます。


このあたりは、『遺伝子医療革命』

がおすすめ。(NIHのトップが書いていて、信頼できる内容。訳も素晴らしい)


医学以外でも、農業とか生き物にかかわることには全部影響してくる。既にモンサントみたいな会社もあるけど、遺伝工学の水準も段違いに上がってくるだろうし、より広範に遺伝子プロファイルがわかることで、遺伝子改変による新種の農作物が出てきやすくなると思われる。今では、合成生物学といって、遺伝子をレゴのように一からを「組み立てよう」という野心を持った人もいる。例えば、Craig Venterという人が有名。

クレイグ・ヴェンター(John Craig Venter)と合成生物学 - ideomics

合成生物を作って、例えばBiofuelにしよう。といった話も多い。他にも無限にアプリケーションがあると思うけど。

『バイオパンク』も非常に優れた解説本だ。


ビジネス的な世界とのつながりでは、フアン・エンリケスという人が有名かもしれない。彼自身は、上記の人たちと違って、生物学バックグラウンドではなく、むしろプロデューサー的な立ち位置だけど、TEDでの視聴率も高い。

Juan Enriquez: The next species of human | Talk Video | TED.com

WIREDでもインタビューされていて、ビジョンがわかりやすくまとまっている。

ゲノム革命の推進者にして、世界を動かす予言者:フアン・エンリケスが描く恐るべき未来予想図 « WIRED.jp


もちろん、これらはビジョンでしかないから、最終的には夢物語で終わる可能性もある。
だけど、そんなに可能性の低い話ではないし、どれも飛躍したものではなく、わりと近い未来の現実的な話だと思います。