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ideomics

サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「医療を基幹産業にする、という発想」?

少し前のちきりん氏のエントリがちょっと話題になっていた。
医療を基幹産業にする、という発想 - Chikirinの日記


Y氏*1の話では、北原先生は、ハーバードビジネススクール(HBS)のヘルツリンガー著『医療サービス市場の勝者―米国の医療サービス変革に学ぶ』『消費者が動かす医療サービス市場―米国の医療サービス変革に学ぶ』(原題は"Market-driven Healthcare", "Consumer-driven Healthcare")を一つの軸として、当初から市場視点、顧客視点での病院作りを進めていたようである。


ざっと文章を読んで、ん?何か日本医療政策機構(以前に若干インターンしていたシンクタンクNPO)の発想に多いに似ているな?と思ったら、そういやこのヘルツリンガー氏の著作には、近藤ジェームズ先生(現ツイッター日本代表、前日本医療政策機構副代表理事、元マッキンゼー)への謝辞があって、どうやらヘルツリンガーと近藤先生は関わりがあるようだ。ちきりんさんのエントリを読みつつ、非常にコンサル的というか、日本医療政策機構的な印象を受けたが、ヘルツリンガー氏を軸に、ある意味マッキンゼー/HBS/日本医療政策機構的な志向と非常に重なってくるのだろう。


ここ最近だと、ポーター氏が医療関係の著作(『医療戦略の本質』)を出していて、ヘルツリンガーのアップデート的な感じなんだろうけど、だいたい競争・市場みたいな概念を軸に、いかに競争や市場がワークする環境をつくるか、あるいはその環境で優れた組織を作るかみたいなフォーマットの話っぽい。(HBSではクリステンセン氏も"The Innovator's Prescription: A Disruptive Solution for Health Care "を出しているが、こっちは未読。)


このあたりの「競争&市場」的な思想の話は間違いなく大事だろうし、一番の王道だと思うが、反応は二分される印象。どちらかというと、医療系の人の反応が芳しくない*2。これは競争を忌避する甘えっていうのもひとつあるとも思うけど、「学会」という「知の共有システム」と併存し難いからというのも大きいと思う。学会を通して、医師はあまり考えもせず知識や知見を共有するが、競争が激化すると、おそらくそれは避けるようになる。今の医療は、学会という知の共有システムに支えられている部分も大きいので、競争の導入が、そのインフラをどう変化させていくのかは気になるところ。このあたりは、学会という制度に参加していない人には、なかなかわかりにくい所だ。もちろん共存のあり方はあるはずなので、二者択一ではないと思うが。


「競争&市場」的な医療外のシステムを医療の世界に輸入することは、それはそれで重要だけど、むしろ個人的には、この学会的な知の共有システムを医療外の世界で、いかにワークさせていくかに興味がある。一般企業では相当に難しいが、自治体や教育関係など、土地にある程度縛られるタイプの産業であれば可能だろう。(流通が自由なプロダクトの世界では難しそうだが、特許システムをもう少し変えて、競争と共有のうまいバランスがあるんじゃないかと素人考えなわけだけど・・・)


とはいえ、「競争&市場」的な考えに代替案もなく反対していてもしょうがないので、医療制度の勉強会:病院とマネジメント - ideomicsに倣いつつ、もし医療界に外部の知見を導入するとしたら、どんな発想があるだろうかと考えてみる。しかし、あんまたいしたアイデアもないし、おつむも弱いので、ここ10年くらいでバズった企業の虎の威を借りまくって、アナロジーで考えてみる。↑ではマッキンゼー/HBSというバハムート*3クラスの召喚獣が召喚されたので、同じくらいパワフルな召喚獣を(MPを度外視して)召喚してみよう。


ゴールドマン・サックス
これは過去に外資系がアプローチを試みたみたいだが、あまり目立った話は聞かない。医療制度の勉強会:病院とマネジメント - ideomicsの先輩は、まさに金融スキームから、何か医療にアプローチができるのでは?という仮説のもと、PEファンドインターンされたらしいが、その話では、あまり役立ちそうなことは見当たらなかったとのこと。金融というには若干語弊があるが、保険者からアプローチするのは、経済畑の人が好むやり方。今の健康保険組合はほとんど機能できない感じなので、ここはきっとアプローチのポイントはあるだろう。


グーグル:
電子カルテや疾病情報、DNA情報など、医療関係・Biomedicine関係には、巨大なデータが潜在的には存在している。このあたりのビッグデータの統合、検索性の充実、データ解析あたりは、確実に重大な影響を及ぼす。幾多の人ががんばってきているが、医療関係者内部からの動きが乏しいので、前には進んでいない。しかし、医師自身がコミットし始めたら、かなり大きな動きになるはず。


フェイスブック
患者同士のSNSや疾患研究者同士のSNS的なものは既に存在している(例えばSchizophrenia Research Forum: Homeとか)。ここから、健康を促進させるような試みや、SNSをどう駆動・マネジメントしていくかは今後の課題。
Science誌の
The Spread of Behavior in an Online Social Network Experiment
An Experimental Study of Homophily in the Adoption of Health Behavior
は、MIT Sloan School of ManagementのCetolaが、ネットワークの構造と健康関連行動の関係を調べたものだが、なかなか応用面で示唆に富む。これはいずれ紹介したい。


アップル:
既にiPadが医療界に進出していて、大きな影響を及ぼしていると思われるが、デバイスベースのネットワークやエコシステムによって、テクロノジーで医療を変えていく未来はきっと想像できる。iPad以上のツールが今すぐ思いつくわけではないが、物理的なデバイスを中心にしたソリューションがきっとあるはず。例えば、全病歴カルテ:保険証にICチップ - ideomicsのように。これは少し考えてみたい。



*1:北原先生がどんどん自らの道を進んでおられることに加え、Y氏が2003年頃から北原先生に注目しフォローしていた先見性に改めて思うところがある。

*2:ちきりん氏のエントリ自体への批評は医療を基幹産業に??-ちきりんさんの日記より | 反田篤志のブログ « あめいろぐ参照

*3:バハムート - Wikipedia参照。どうでもいいけど、ベヒーモスとバハムートって由来は同じものだったのね