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西田先生講演:思春期のメンタルヘルスと自殺予防

3月の統合失調症学会に参加した。ランチョンセミナーの西田淳志先生(東京都精神医学研究所)の話は、めちゃ興味深かった。


統合失調症は発症から治療までの期間が長ければ長いほど、治療に反応しにくくなるし、その後の経過が悪くなることが知られていて、いかに発症後にすぐに治療に入るか、もっと言えば、発症前にいかに予防的に介入するかが大事になる。統合失調症自体は、全人口の1%程度にある病気で、普段目に触れることはないけど、実は結構多い。発症すると「表舞台」から遠ざかるのでわかりにくいけど、有名進学校や有名大学の人が通院していることも結構診る。案外、他人事の話じゃないのだ。統合失調症は昔、精神分裂病と言われていたもので、能力的にも人格的にも荒廃することが多いため、かなり重大な疾患で、治療を含め、いかに「解決」していくかが社会的にも重要。



いかに統合失調症発症に早期介入していくかが、今大事な課題のひとつなわけだが、統合失調症発症以前に、高いリスクな人たちを見つけ、そこにサポートをしていくという予防的なアプローチも、並行して大事な課題。そういう背景で、統合失調症に移行しそうな人たちを見つける努力がなされていて、例えば、11歳時点で精神病様症状(軽度の幻聴体験や、超能力的な体験など)があると、統合失調症へと移行するのが15%程度(一般人口の5-15倍くらい)と高いそうだ*1


この精神病様症状を持っていると、「死にたい」という気持ち(希死念慮)が高いという相関関係があるのだが、その中でも、自覚的に困っていて、かつ援助希求ができないというセグメントは、特に希死念慮が高いとのこと。そういった困難が何もない人の、20倍前後希死念慮自傷行為(自分で自分の身を傷つけること)があるらしい。これは、かなり高い割合なので、重点的にサポートをしていく必要がある。


青少年の死因で一番多いのは自殺。ということはあまりに有名な事実だが、この青少年の自殺、実は統合失調症とかかなり多いと思っている*2。ぱっと見はわからなくても。統合失調症は発症数年内に自殺が集中していることが知られていて、統合失調症の好発年齢が思春期〜青年期であることも、背景として矛盾しない。文学の世界では、色々と「文学的な」理由で自殺みたいな話もあるかもしれないけど、人間、相当な背景がないと、なかなか自殺まではいかないだろうと思う。そのひとつとしてありうるのが、(一般に思われているより発病者が多い)統合失調症。年間の自殺者が3万人という現状は、何かしらの対策を要すると思われるのだが*3、これに対するひとつのアプローチとなる。



(自殺者統計|自殺対策支援センターライフリンクより)


ただ、西田先生の話では、そういった高リスクな子たちをムリヤリに精神科につなげるのは止めた方がいいとのことだった。精神科は敷居高いし、特に思春期の子供はそう。これはほんとそう思う。自分を精神疾患であると認めたい人はそんな多くない。ヘルプを求めている人には、「こころの問題としてではなく」、まずは体の不調として捉えるのが良いそうだ。というのも、統合失調症も、遡れば頭痛、めまい、腹痛など身体的な不調から始まり、それがまず苦痛なことが多いから。主訴は基本的に尊重する(診断まで寄り添いすぎるのはさすがに医療的に問題あるが)。というのは実臨床でも必要性を感じることが多いけど、特に思春期にはそうかもしれない。本人は身体的主訴がメインだったりするので、こころの問題として捉えると、嫌われる。このあたり、保健室をどう活用するか?


現実的に大事なイシューを扱っていて、しかもストーリーがある発表だった。ひとつひとつのデータ(プロダクト)として面白いだけでなく、解決策までストーリーをもって繋がっていく。全体像(トータルソリューション)としても優れている*4。一般論になるかもしれないけど、実存と研究内容が一致すると力強いな、と。まさにライフワーク的な。思わず「良い仕事してますね〜」とつぶやいてしまう。*5

*1:もっと若い年齢、例えば7歳とかに聞いても、そのくらいの年齢だと、みんなファンタジー癖があるので、申告する学童の割合がすごく高くなってしまい、予測因子としては役に立たないらしい。11歳くらいが適当だとか。

*2:これは私個人の意見

*3:suicide study - ideomics

*4:もちろん、まだ研究の途上でやるべきことはたくさんある

*5:中島誠之助 - Wikipedia