ideomics

サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「ポスト蔦谷書店」の書店の形

先日代官山の蔦谷書店に行ってみた。
http://tsite.jp/daikanyama/store-service/tsutaya.html


評判どおり心地よい空間で、もうちょいアクセスが良ければ頻繁にふらっと立ち寄りたくなる場所。書店ビジネスが瀕死といった話もあるけど、こういった嗜好性を高めた形は、ひとつの王道な形だろうなと思った。Shibuya Publishing Booksellers*1とかね。完成した形だと思うし、あんまり文句のつけようもないけど、これを「20世紀の書店の最終形態」として、電子書籍を前提にした次の形を構想するとしたらどんな形になるだろう。


強いて物足りない点を挙げるとすれば、ひとつはstaticな感覚が強かったということ。本をゆっくり読むという贅沢な時間を過ごすには良い雰囲気だけど、全体に美術館や博物館的な感じ。情報が行きかうというよりは、情報をかっちり保存するような、ストック型の書店。もっとフロー型の書店を望むなら、きっと六本木ヒルズにヒルズアカデミーなんかが良いんだろう*2「ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系」 岡本真、仲俣暁生 (編集) - ideomicsのように、書店が「コーヒーハウス」化して、議論や情報交換の場として機能することが「21世紀の書店の形」とすれば、ヒルズアカデミーなんかが雛形になる。情報の共有だけであれば、電子書籍でのソーシャル・リーディング*3に代替されそうだけど、まとまった議論までになると、リアルな書店に分がありそう。


情報のフローではなく、本自体のフローを高めるとしたら、どうだろう。例えば、ニューヨークに現れた「何も売らない」自動販売機が話題 | Pouch[ポーチ]を参考に、本の「自動交換機」- ブックレンタル・ポスト - を構想することもできる。本の交換をポストを通して行う。体系的な本の検索は、アマゾンや巨大書店でできるので、「偶然の出会いとセレンディピティ」にフォーカスする。書き込みや手紙的なメモの差し込みOKにすれば、情報や人との不思議な出会いがありそう*4。これは電子書籍ではできないアナログの強みなんじゃなかろうか。美術館とかコーヒーショップとか、品の良さそうなところに設置すれば、そんなテリブルな事態にはならないと思う。読み終わった本をBookOffに売ってる人も、そういった仕組みで、別な本を手に入れられるなら、そっちの方が良いんじゃないか。


電子書籍で"author"への敷居が下がった時代を見据えれば、「読み手のための書店」から「書き手のための書店」という発想もある。つまり、書くためのサポートをするような書店。機能としては、リファレンスやデータベースの管理と編集者的なセンス、情報のコンシェルジェといったあたりになるか。ブログという形で書くことへの敷居は下がったけど、authorという文字にふさわしいauthenticな文章(内容も文体も)を書くことをサポートする書店。そんな形もありえたりするんじゃなかろうか。今で言うところの編集者が「開業」する。電子書籍以後の出版関係者や書店が、電子書籍共存するのはこれがひとつの形かも。


とはいえ、蔦谷書店自体は素敵です。電子書籍の書店にはない心地よい雰囲気があるという意味では、リアル店舗の意義は大きいし、偶然の出会いとセレンディピティもありそうだし。まずは50-100万人規模のエリアにひとつずつ欲しいわ。


(写真は全てhttp://tsite.jp/daikanyama/より)

*1:SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS

*2:「図書館はコミュニティ創出の「場」 会員制ライブラリーの挑戦 (ネットワーク時代の図書館情報学)」 小林麻実 - ideomics参照

*3:てか、amazonってSNSへのスタンスはどうなんだろうか。検討はされたんだろうだけど、どういう経緯で見送られたのか。時期を逸したのか、あるいは別の理由か。本の共有や、感想・注釈・意見の共有なんていかにもな感じだけど、やらなかったのはなぜだろう。

*4:書き込みの共有だけであれば、ソーシャル・リーディングの方が効率的だけど