ideomics

サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

近代国家の先?:virtual state?

国家とは、「武力」という決済方法で、土地を配分する仕組みだった。現代でも武力をベースにした国家の力はとても大きいが、その姿は変わってきている。国民国家(nation state)という枠組みは強固に残るだろうけど、変わる部分もある。


よく言われる可能性としては、以下の3つ

都市国家への移行*1
・帝国の再来
・EUのような共同体・連邦制への移行

だけど、この辺りは色々議論されているので割愛。


他の可能性として、サイバー空間*2の拡大と高機能化に伴って浮上しているのが、virtual stateというもの*3


サイバー空間を通した繋がりが強くなり、そこで得られるモノや精神的な充足が大きくなると、コミュニティも村的なものから、国家的なものへと移行する可能性がある。ルールやシステムとして明確された規範・制度が出現し、確固たる枠組みとして浮上するという意味で。裏面を見るならば、「あいつら」と「おれら」という明確な境界も出てきて、対立やら争いも出てくるかもしれない。歴史上のその最たる例は、宗教戦争なわけだけど。


分断された日本のインターネット - elm200 の日記はなかなか参考になる。この文章に同意するならば、サイバー空間での分断は既に起こっていることだし、これが進むと、さらに群島化してくるかもしれない。コミュニケーションがほとんどなければ、ますます「あいつら」と「おれら」という風に分裂するし、言葉の使い方も異なってくる。使う言葉が異なってくると、さらに分裂する。


欧州中世ではラテン語が学問の共通語であったが、国民国家に分節されるにつれて、英語やらフランス語やら色々な言語な大きな勢力になってきた。今は英語が共通語だけど、インターネット世界が本当に分節されてしまい、コミュニケーションの範囲が決まっていくとするならば、言語が再び分節されていく可能性もある。ジャーゴン(専門用語)という言葉があるが、これは一種の「方言」とも言える。専門用語という「方言」。そして方言が極まると、それは新しい言語になる。ダンテがラテン語ではなく現地語で神曲を書いたことから、中世から近代に移行したという言い方があるが、それと同様に、「ジャーゴン=方言」に開き直った表現をすることで、次のステージが始まるかもしれない。


自分が愛着を感じる対象も再編成されていく。例えば、自分とは直接関係のない2人が今にも崖から落ちそうで、どちらかしか助けられないとする。一人は同国人で、一人は外国人だが同じ会社の人。他の条件は同じ。その場合、どっちを助けるだろうか?職業にコミットが強い人ならば、後者を選ぶかもしれない。そして、カルト的な企業ならば、ほぼ間違いなく後者だろう。


virtual stateというのは、コミュニケーションの量(つながりの強さ)で分節される単位だけど、もう少し強く表現するならば、社交資本social capitalによってグループ化される単位。そして、social capitalに基づく位階秩序が社交主義socialismであり、social capitalによって分節化される集団が、virtual stateであるとひとまず定義づけることができそうだ。


社交資本で分節される。ということは、おそらく「社交資本の資本家」、つまりネットワークのハブやプラットフォーマーがその分節をコントロールすることになる。領主・貴族が農民をコントロールしたように、資本家が労働者をコントロールしたように、新しい「貴族」たる「社交資本の資本家」が、周辺のノードをコントロールすることになる。


古くは宗教から、新しくは企業まで、同じ土俵で勝負することになる。ドラッカーの継承 - ideomicsでは、法人の「規範」が、その法人の信頼性につながるという議論であったが、「規範」が人を引き付け繋がらせる鍵となる可能性はありそう。規範の強さが信頼性と相関するといったように。もし法人における規範の重要性が増していくならば、法学の対象もいわゆる国家の法律だけでなく、「法人内立法」も対象にできるかもしれない。例えば企業内における立法。マネジメントというと経済学の領域に近いと考えられがちだが、規範性を重視するなら、法学的なアプローチの対象にもなりうる*4。あるいは、評価の体系というのも、ネットワーク形成の王道だろう。例えば、科学論文におけるインパクトファクターのように。


しかし、social capitalにせよ、virtual stateにせよ、"capital"とか"state"とか前の制度の用語を援用せざるを得ないのは仕方ないのかな。資本主義にまつわる議論でも、当初は階級闘争・階級対立など、その前制度である封建社会・貴族社会の用語である「階級」といった用語を使用していた。用語に共通性があるというのは、仕組みの進化としては自然のことなのだろうか。資本主義が国家に下支えされているということが、金融危機後の企業救済で明らかになったが、そのアナロジーを使うなら、社交主義socialismも資本主義に下支えされてこそ存在できるのかもしれない*5

*1:"After America" ポール・スタロビン - ideomics"After America" ポール・スタロビン

*2:資本主義の先?:サイバー空間・サイバー海賊・サイバー軍 - ideomics

*3:virtual state - 想像の共同体? - ideomics

*4:法学はもともと「神の法」を対象とし、現実的には教会法を対象としていたことを考えると、法人内の立法・司法に関わるのは先祖返りと言えるかも

*5:あくまでもアナロジーからの発想であり、この文章の意味はこれから考えたい