「ゲームニクスとは何か」サイトウ・アキヒロ
ファミコン、プレイステーションなどゲームには、人を惹きつけるための工夫が満載だ。インターフェイスのデザインやユーザーエクスペリエンスの重要性が増していく傾向に対し、ゲーム作りから学んでいこうというコンセプト。
(ウィキペディアより)
ゲーム自体は生活に必須でないから、飽きられればすぐに捨てられる。飽きられずに人を惹きつけ続けなければ生き残れない。そのための知見を著者はこうまとめる。
2大目的:
・直感的な操作性
・段階的な学習効果
4大原則
・直感的なインターフェイス・操作性
・マニュアルなしでルールが理解できる
・はまる演出と段階的な学習効果(ほめる演出*1)
・ゲームの外部化(現実とのインタラクション)
これらを製品作りや教育、医療、介護なんかに活かしていこうというアイデア。
例えば製品。
アップル社の製品の操作性とファミコンの十字キーやWiiリモコンとの類似性を指摘している。実際にアップルがゲームから学んだとはあまり思えないが、確かに共通するものはあるかも。「これからはボタンの数でヒットが予測できる(少ない方が良い)」と述べているが、どうだろうか。日頃TVに接してないせいか、たまにTVに触れると、リモコンの複雑さや画面表示のわかりにくさに驚く。慣れればいいんだろうけど、確かに改善の余地はありそう。
例えば教育。
授業をRPGに見立てて、授業自体をデザインすることを提案したり、ゲーム機というハードウェアの発想を、
黒板や教室のデザインに活かしていこうという提案。具体的なアイデアはないようだが、コンセプトレベルでは共感できる。早速自分も発達障害や情緒障害、愛着障害の児童の療育にどう活かすか考えてみる。iPadは当初のコンセプトとして、教科書や教育用ツールとしての機能も想定されていたと聞く。ゲーム的なアプリで実際にもうありそう。
(任天堂社ウェブサイトより)
直接的な利用としては、京都府の男山東中学校・高校での事例が挙げられていた。いわく、ニンテンドウDSで英単語学習したら、一般的な勉強より効果が高かったとか。
例えば医療・介護。
ニンテンドウDSの脳トレと言えば、知らない人はいない有名ソフト。こういったソフトだけでなく、リハビリにも応用できる。フィットネスクラブとは医療機関である - ideomicsで紹介したXRkade(フィットネスとアーケードゲームを融合させたフィットネスクラブ)をリハビリ向けに転用したものなどが思いつく。既にナムコは1999年からリハビリテイメントマシンなるものを作っているらしい。敏捷性が上がり、転倒予防になるといった報告もあるとか。
「ゲーセン、高齢者の憩いの場に」(Yomiuri)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20101224-OYT8T00252.htm
こんな記事があった。もしかしたら、アーケードゲーム+リハビリは結構ポテンシャルあるかも。
脳トレ自体、サイエンスの世界では議論が紛糾したこともあり、
Nature, 2010
"Putting brain training to the test"*2
のように脳トレの効果に否定的な見解もあれば*3、
Science, 2009
"Changes in Cortical Dopamine D1 Receptor Binding Associated with Cognitive Training"*4
のように間接的に支持的な見解もある。
是非はともかくとして、これだけの主要誌に取り上げられるということは注目すべきこと。脳トレのようなトレーニングをリハビリテーション医学の一部と考えるならば、リハビリ科ってとても面白い世界かもしれない。仮に脳トレ自体がイマイチだったとしても、ニーズは変わらないわけで、そこに応えうる技術・方法は求められ続ける。
2007年の本だけど、なかなか面白かった。今となっては常識的になっている部分もあろうが、今後とも応用を考えていけそうな分野。
その他参考:
発売時賞賛の声が多かった本。よくできてる本だと思う。