ideomics

オブジェクト思考ブロギング

「図書館はコミュニティ創出の「場」 会員制ライブラリーの挑戦 (ネットワーク時代の図書館情報学)」 小林麻実

アカデミーヒルズ六本木ライブラリーの紹介。こちらのライブラリーを立ち上げた小林さんという方の案内にて。既に有名なんだろうけど、「ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系」 岡本真、仲俣暁生 (編集) - ideomicsでも触れられていた、図書館と書店とカフェ/サロンが一体化したような新しい形のライブラリー。


会員制ライブラリー アカデミーヒルズ


従来の図書館のように、蔵書を蓄え、それを貸し出すというモデルではなく、本自体は売り出し蔵書は高回転させるとともに、本と場所を軸にしたコミュニティ形成を中心とするモデル。ライブラリーという名前であるが、コミュニティ形成・ネットワーク形成が主要な目的らしい。まさにリアル・ソーシャルネットワークの具現化であり、情報交換をメインとするあたり、昔のコーヒーハウスだ*1



The Economistでもニュースの媒介がマスメディアからコーヒーハウス的なものへと移行するといった記事があったが(Back to the coffee house | The Economist)、それを先取りしている。現代アートの世界では美術館とギャラリーが一体化する傾向があるけど、本の世界でも似たように図書館と書店が一体化しても良さそう。現代アートならぬ、現代ライブラリーの姿。しかし、森ビルはやっぱすごいね。海外のモノマネではなく、ゼロからコンセプトを立ち上げたらしい(著者曰く)。


こういった現代ライブラリーでは、司書(ライブラリアン)の姿も変わっていく。情報に関してはキュレーター/コンサルタントとして振るまい、そして何より人と人とのつながりをファシリテートする役割が重要になる。アカデミーヒルズ六本木ライブラリーではネットワーキングパーティという形で直接的に行っているよう。ライブラリアンの再定義、再発明というのは面白いテーマかも。


この本の後半は、企業内ライブラリーとナレッジマネジメントの考察に割かれている。企業経営にあたって情報の収集・活用は大事になるが、ライブラリーを中心に考察される。企業内ライブラリーに注目したことがなかったので、なかなか興味深かった。野中氏の「知識創造企業」におけるモデルを使って説明していたが、暗黙知の伝達の仕方として、上記のようなコミュニティ型のライブラリーは非常に魅力的かもしれないと思った。野中の提出した課題である知識伝達のあり方へのひとつの解答となっている。このあたりはウェンガーの「コミュニティ・オブ・プラクティス」とも関わるか。





他の図書館や書店がアカデミーヒルズ六本木ライブラリーのような姿になっていったら、世の中がすごく面白くなりそう。実際にどの程度機能しているか知らないけど、ぜひこれからの「ライブラリー」の雛形となって欲しいと感じた。


追記:
人間や社会にどんな知的ソフトウェアがインストールされているかを知り、それが変更されると何が変わるかを想像できるようにすることの必要性: DESIGN IT! w/LOVEは図書館の原型にも触れていてなかなか示唆に富む。直接関係ないけど。