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「メッテルニヒ」 塚本哲也

メッテルニヒとは、19世紀オーストリア帝国外相として、ナポレオンに対抗する同盟をまとめた貴族政治家*1で、元新聞記者の著者がジャーナリスティックにまとめた伝記である。


メッテルニヒの功績としては、↑の通り、ナポレオンとつかず離れずの距離を保ちながらある程度親しくしつつ、対ナポレオン同盟(オーストリアプロイセン、ロシア、英国)をまとめるという外交手腕が第一のものである。なので、この伝記も、その部分がハイライトで、外交交渉を駆使して成功に導く過程はとてもエキサイティング。ドンパチの戦いではないけれど、交渉や戦略といった大人な手段を用いていく様を読むのは、まさに大人のための冒険譚と言える。


単純に政治的な立ち回りや交渉のやり方、時宜の読み方といった、自分達の世界でも使えるような教訓が引き出せるのも魅力だが、文章が滑らかで話しとしても面白い。逆に言うと、話を面白くするために若干脚色・演出されている疑いもあるので、あまりアカデミックなきっちりした正確さは期待できないかも。塩野七生学術的な論文の中間くらいの位置づけ。


また、18世紀〜19世紀の貴族の香りを楽しむというのもこの本の有用な使い方である。人文的な教養主義や騎士道を(シニカルではなく真面目に)嗜み、かつそれが「エリート」として社会に受けれいれられている世界における<貴族=エリート>の香りである。ある種骨董を愛でるような楽しみがある。


ジャーナリストが書いた文章なので、硬さと読みやすさのバランスが丁度好みだった。こういった文章の厚み(需要と生産)がもうちょっとあると一層嬉しいんだけど。



ナポレオンを打倒し、華麗なウィーン会議の成功から、革命による追放・亡命・流浪まで。革命とナショナリズムに立ち向かった名宰相。ナポレオンをはじめとする好敵手たち―アレクサンドル、タレイラン、カッスルリー、ウエリントン、バーク、ゲーテディズレーリマルクス…との「死闘」「策略」「友情」の数々。ハプスブルク三部作『エリザベート』『マリー・ルイーゼ』完結。