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ideomics

サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「ザ・フィフティーズ」 デイビッド・ハルバースタム

ベスト・アンド・ブライテストなる本でベトナム戦争時の政権内幕を詳細に綴ったハルバースタムが、50年代アメリカの全体史を組み立てる。アメリカ、そして世界が戦後世界の構築へと過ごした「現代の始まり」を。


ジャーナリストとして、様様なテーマでノンフィクションを物している彼だけれど、スコープの広さは本書が一番広い。フレデリック・ルイス・アレンのオンリー・イエスタディ*1なんかの影響を受けてかどうかかわからないけれど、ある時代の全体を描ききろうというのは卓越したジャーナリストならば、抱いてしまう夢なのかもしれない。選んだ時代は50年代。僕らから見ると60年代の方が激動感があるけれど、著者は、60年代の出来事は50年代に用意された動きの表現型と解釈しているようだ。


現代史として教科書的な出来事がたくさん載っているとともに、マクドナルドの創設話とか、GMの隆盛・凋落、ピルの発明(サンガー婦人の性革命)など、生活に密着しているけれど、なかなか教科書にはとりあげられないトピックも満載で面白い。ある意味、「歴史家」として、現代の社会史を描いている。そんな感じ。(オンリー・イエスタディもそうだけど)


個人的に特筆すべきは、彼の筆力だろう。とにかく叙述が面白いので、ぐいぐいと読んでしまう。最近は、ノンフィクションに対するフィクションの叙述*2がひとつのテーマなので、こういったノンフィクションの叙述力に特に惹かれる。

本書を読みながら、アメリカは、やはり何よりも、ジャーナリズム、そしてノンフィクションの国だと呟かずにはいられない。(本書解説より)


昨今言われているように古典的なジャーナリズムが採算的に衰退していく傾向は、ある意味ジャーナリズムのアカデミズム化をもたらす可能性がある*3と考えているが、そのひとつの方向性を与えてくれるものとして示唆に富む。マイナーな本だけれど、ハルバースタムの残したものは(せめて記憶には)保存していきたいなと思う所存。




アメリカ50年代の歴史!トルーマンの勝利、マッカーシー旋風、マッカーサーという男、天才オッペンハイマー、水爆の父、GMの栄光、レヴィットの郊外住宅、マクドナルド兄弟の店、ホリデイイン誕生、アイ・ラブ・ルーシー、アイゼンハウワーの時代、欲望という名の電車、キンゼー・レポート、ビート世代、ニクソンの孤独、フーヴァーの帝国、ダレス兄弟…『ベスト&ブライテスト』を凌ぐ、ハルバースタムの傑作。

*1:Amazon.co.jp: オンリー・イエスタデイ―1920年代・アメリカ (ちくま文庫): F.L. アレン, Frederick Lewis Allen, 藤久 ミネ: 本

*2:小説という文芸に対する、「文芸としてのジャーナリズム」といった意味で

*3:金銭的な報酬が得られらない中でインセンティブがありうるとしたら、知的好奇心と社会的な名声・位置づけが大きいと思うから。大学や研究機関が優秀な人を低コストで雇えるのと似たような感じで