ideomics

オブジェクト思考ブロギング

本郷のホームカミングデイに行った

特別フォーラム「新技術が切り拓く日本の未来」というやつを聴講。予想通りリタイヤ後数年以上の高齢者が多かったが、内容は素晴らしかった。小宮山元総長が締めくくりに「生まれて一番良かったシンポジウム」と言ったのは、明らかに誇張だが、一般向けの中では秀逸なものであったと思う。


最初に基調講演を小宮山元総長。地球環境のサステナビリティのために、エネルギー削減を行わなければならないが、そのためのロードマップがビジョン2050というのに示しているらしい(著書「地球持続の技術」参照)。英訳や中国語訳も出ているので、それなりに反響があるのだろう。


興味深かった点としては、

・途上国時代(坂の上の雲を目指していた時代)は、「産業を作ればとりあえず暮らしは良くなる」というモデルで中央集権的に産業をつくれば上手くいったが、先進国(雲の中に入ってまさに五里霧中となった時代)となると、「暮らしを良くするために新産業を興す」必要があり、それは、中央集権ではなくある程度自律分散したユニットが協調して行う必要がある。

・CO2削減に関しては、ものづくりの現場ではほぼ理論値近くまで削減しており、そこで削減しようとするのは無謀。だいたい日々の暮らし(オフィス含む)で排出されるCO2とものづくりの現場で排出されるCO2は50%/50%。日々の暮らしで削減を進めれば、エネルギーコストの低下にもなり、almost all win。

・日本の製造業には、ある製品カテゴリーで世界シェアの80%以上を持っている企業がいくつもある。例えば、内視鏡オリンパス、自転車ギアのシマノ、小型モーターのマブチなど。環境技術も期待できる。

・小宮山さんは自宅をエコハウス(太陽電池とか二重窓での断熱とか効率的な熱利用とか)にしているが、従来のエネルギーは80%削減できた。こういった経験も踏まえ、プラチナシティというエコ&高齢化対応したまちづくりを全国に広めるプラチナシティネットワーク構想なるものをつくって、行動しているらしい。

・高齢社会が課題であるが、実は80歳以上の80%はほぼ健康(介護支援なし)で、20%が介護支援必要な人達。今まではこの20%に焦点を置いた「高齢社会対策」をしていたが、残りの80%に対するある種のnormalization的なもの(社会と繋がりを持ち続ける)が必要。



続いてJR東海会長、シャープ社長、三菱自動車社長がそれぞれ、環境技術としての、リニアモーターカー太陽電池・LED、電気自動車についてプレゼン。モデレーターと聴衆が質問。どれも面白かったが、特にシャープの社長のは秀逸だった。この社長めちゃかっこいい上に、しゃべり方もほんとシャープでエキサイトさせてくれる。製造業にこんな社長いたら、技術系の企業も未来がある。


興味深かった点としては、

・シャープ堺工場で生産される太陽電池でだいたいトータル500TWh以上発電できる。サウジアラビアのトータルの原油埋蔵量から発電できる発電量は170000TWhなので、堺工場が340個あれば「エネルギー輸出国」になりうる。

ゴビ砂漠を全部太陽電池で埋め尽くせば、全世界の電気を賄える。サハラ砂漠であれば、5-10%くらい。

・LEDは毎年コスト当たりの発電効率が数10%ずつ上がっている。何年かすれば、ほぼ全電球がLEDになる。LEDは直流なので、直流で電気を送る太陽電池と相性がいい。これからは直流が主流になる。

・前社長がシャープの販売するTVを2005年までに全て液晶にすると宣言したとき、新聞や社内でも嘲笑や批判があったが、実際には2004年に達成されている。太陽電池やLEDも野心的な目標だが、達成しうる。


製造業の社長ってあんまはっきりしたイメージが今までなかったけど、ビジョンを持って、それにコミットしていて、技術に理解がある人ってのはマジかっこいい。エンジニアって人種への見方が大きく変わったし(シャープ社長はエンジニア畑出身)、彼らに対する敬意の念や関心が生まれた気がする。これから、自分としては「エンジニア」ってのはひとつのキーワード。