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サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「センチメンタルな旅・冬の旅」 荒木経惟

実家の黒柴が倒れたときの一番後悔は、彼の写真をもっと撮っておけばよかったという後悔。思い出は写真に撮らない方が本物になるといったロマン主義もあるようだけれど、何にせよ残せるものは残せるにこしたことはない。人間の記憶はそんなによくできたもんじゃないから。


センチメンタルな旅・冬の旅は、若くして死んだ妻の生前の姿を収めた/納めた写真集である。


作家は、妻の死によって写真を撮ることの切実さが身に染みたのだろうか。この作品以前にも写真集はあるけれど、妻の死をきっかけに、写真というものが持っている意義を最大限に感じたのかもしれない。写真がこの上ないありがたみを持つのは、その対象が失われてからであろう。


ちょうど彼の永眠した前日に、ある友人が会話でこの写真集に触れた。何かの偶然だろうか。



これは愛の讃歌であり、愛の鎮魂歌である。新婚旅行での“愛”を記録、私家版『センタメンタルな旅』から21枚。妻の死の軌跡を凝視する私小説写真日記『冬の旅』91枚。既成の写真世界を超えて語りかける生と死のドラマ。