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オブジェクト思考ブロギング

腹腔鏡のリアリズム

産婦人科研修中につき、最近腹腔鏡手術というものを見ることが多い。お腹に4つくらい穴あけて、長い棒のカメラとか長い棒の先っちょにハサミがついたやつとかを入れて、カメラ見ながら細かく手術するというやつ。

例えばこんな感じ


こういった手術は、とても「ゲーム」的で、見ててもやってても、何かのTVゲームのような感覚に近い。ゲームセンターにあるようなギミック(ジョイスティックとかとか)の延長線にあるような器械でカチャカチャやるわけだ。そのバーチャルな映像をどれだけリアルに捉えられるかで術者の腕が決まるのは、たぶんゲーマーの素質と似ている。

もちろん、責任の重さとかリスクとかは全然違うのだけれど、とりあえず操作感は似ている。概して、顕微鏡覗いてやる手術(マイクロサージェリー)とか内視鏡胃カメラとか)でやる手術も似たような感じ。

こういった手術が最近どんどん増えてきていて、むしろ旧来の手術にとってかわって主流になりそうな勢いなんだけど、この「ゲーム」的な感覚ってのがなかなか面白い。

画像という1枚はさんで、いわゆるリアルと向き合うので、それは、バーチャルというかリアルというか、よくわからないものになる。「ゲーム的リアリズム」という感じ。(本来のこの語の意味とはずれるかも)


リアルタイムの映像で世界と向かう感覚ってのは、バーチャル/リアルの境界をあやふやにする。そして、その映像にしばらく付き合っていると、境界が溶けてくる。ウェブの世界をバーチャルというのは一般的だけど、ウェブの世界にずっと付き合っていると同じような感覚に陥るのはよく知られている通りだ。

おそらく、バーチャルとリアルという分け方はほとんど意味をなさないのだろう。というか、バーチャルと言われるものをどれだけリアルとシームレスに捉えられるかで、(腹腔鏡手術のように)何かしらの「腕」が決まるのかもしれない。特に現代は。「ゲーム的リアリズム」って言葉には、そんな示唆も含まれていると解釈したくなる。