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学問と教養の間に − 「十二世紀ルネサンス」 チャールズ・ハスキンズ

ルネサンスというと、レオナルドやミケランジェロを中心とする14世紀前後のイタリアルネサンスを指すことが多いが、これは必ずしも真ではない。なぜなら、12世紀にもそれに匹敵する「ルネサンス(再興)」があったから。そんな挑戦的な内容である(1920年代の発刊当時のことではあるが)。


12世紀頃、農具改良によって、農業生産性が高まり、通商によってより国が豊かになったこと、世俗君主・貴族の力が強くなり、教会の絶対性が崩れ思想の自由の余地が生まれたこと、学者が増え交流が盛んになったこと、といった西洋の内在的な要因に加え、アラビア世界という当時の先進国に触れることで、西洋が洗練された文化をもつにいたった。特に科学・法学・神学(哲学)での進歩が著しかったらしい。アラビア経由ではギリシア・ローマ時代の科学(プトレマイオスアルキメデス)やアリストテレスの哲学書、ビザンツ経由ではローマの法学が伝わり、それが西洋に学問をぐんと発展させた。あるいは再興させた。交流の中心となったのは、イスラムとの接点であったコルドバ(スペイン)やシチリア(イタリア)である。

イタリアルネサンスは、古典・人文学・芸術面での成果が著しいが、どうやら12世紀の運動は、科学・法学・神学(哲学)での成果が目立つようである。美術というわかりやすいアイコンがあるイタリアルネサンスに大して、こちらは概念的なものが中心で、なかなか注目されにくい(どの科目も、いかにも嫌われそうな科目・・・)。しかし、ヨーロッパの基礎を作ったという意味では、むしろ12世紀の方が豊潤な時代であったかもしれない。

おそらく、アラビア経由のギリシア・ローマ文化に触れることで、改めて自分達の土地にかつてあった文化のすばらしさを知り、それが14世紀前後のイタリアルネサンスに繋がっていくのであろう。イタリアルネサンスは、ギリシア・ローマの文献を直接あたっており、アラビア語を介した間接的なルネサンスというより、直接的なルネサンスといって良いだろう。まっどちらも素敵ですけど。


ハスキンズはハーバード大学教授であったらしいが、実証的・学術的でありながらも、ディレッタントの興味をかきたてる、素晴らしい本である。内容そのものが挑戦的で興味をかきたてることもさることながら、彼自身がディレッタンティズムを失わず、幅広い視野を心掛けでいたからではないだろうか。学問の世界と教養の世界の両方を納得させる快心の著作だ。こんな作品をものす人物がいる学問の世界とは、なんと豊潤なことか。