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サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

アングロサクソンに咲いた華 − "Only Yesterday" Frederick L. Allen

「ギリシアは哲学を、ローマは法律を、アングロサクソンは市民的自由を生んだ」とは至言である。市民的自由の中核として、言論の自由や言論による公的空間を挙げるならば、その具体として、「アングロサクソンはジャーナリズムを生んだ」と言い換えても良いかもしれない。


Frederick L. Allenは、Atlantic Monthly, Harper's Magazineの編集者/長を務めるなど、ジャーナリズムの中心にいた人物。そんな彼が、自分の生きた時代である1920年代を、文化、政治、経済、裏世界など総体的に描いた本がこれ。Roaring 20sとかJazz Ageと呼ばれる1920年代が目の前に生き生きと蘇るような叙述。事実分析の巧みなアカデミック・ジャーナリストを東の横綱とすると、こちらは叙述の巧みな西の横綱であろうか。


思えば、ジャーナリズムもひとつの文学に違いない。アメリカの作家にはジャーナリスト出身が結構多いし、権威あるピュリッツァー賞もジャーナリズムへの賞が基本をなすことを考えると、アメリカ文学は、ジャーナリズムに支えられている(部分もある)と言ってよいのかも。
(このあたりに関して、http://www.defermat.com/journal/2008/000330.php
とはいえ、小説と違って、やはり事実から両足を離してはならない分、小説家とは違う素質が求められる。アレンに関しては、歴史への教養や歴史的な感覚が凄いなぁと感じる。たった10年分の叙述でも歴史を構成する力が発揮されているような。カッコエエ。まじカッコエエ。


分析を得意とするジャーナリストが言論空間において大切なのは、もちろん言うまでもないが、このような事実に両足のついた叙述家も同じように大切である。でないと、言論空間が分析だけで乾いた土地になってしまう。そして、大局的に物事を掴む総合力が失われる。そんな気がする。



これを読んだ後はしばらくトリツかれていた(いや今もか)。なんなんだろうか、この感覚は。憧れて止まない。