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政治の無形文化財 − 「失われた民主主義」 シーダ・スコッチポル

20世紀初頭まで機能していた、階級や所得を超えた中間団体や結社が徐々に衰退してきて、専門家が経営するシンクタンクNPOが増えてきたという物語を、実証的に描いている。そんなアメリカの政治文化の変遷を論じたもの。

前者は、わかりやすく言うとフリーメイソン的なもので、信条が一致するものであれば、階級や所得などに関係なく繋がりあった結社であり、前世紀までは、人々の中で大きな存在であった。例えば、墓標に、「○○結社のメンバーであった◆◆ここに死す」と刻む人がいたくらいである。会社や国家がはっきりとしたプレゼンスを示す前の時代には、そんな団体があった。メンバー数が、全米の人口1%を超える結社や団体が当時数十あったらしい。

スコッチポルは、前者が個々のメンバーに参加を奨励するのに対し、後者であるシンクタンクNPOはいわゆる会員が受動的であることを指摘している。前者がメンバーシップを基本としているのに対し、後者は専門家がマネジメントし、会員は消費者としてそれを受け取るという構図。副題の「メンバーシップからマネジメントへ」が示すとおり。

NPOというと善玉のかたまりのような前提で語りをされることが多いが、ここでは、民主主義の変質(衰退)を象徴するものとして取り上げられる。すなわち、政治からの非専門家の疎外であり、観客型民主主義へとつながる変質である。参加をベースにした「民主主義」は失われてしまった。

机上の空論としての政治哲学も一定の価値があると思うけれど、やはりこのような事実に基づいた思想には強い魅力と説得力がある。トクヴィルを代表とする実証的な政治思想・・・プラグマティズム保守主義の最良の組み合わせ。学術書であり読みにくいが、21世紀の古典候補であろう。このようなテクストが同時代に生まれたことを幸福に思う。


家族や国家や会社の絶対性が失われた今日では、帰属意識の所在も不明瞭であり(それはそれで良いことだと思いますが)、少し昔の話に耳をかけてもいいかもしれない。