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オブジェクト思考ブロギング

「現代語訳 学問のすすめ」 福澤諭吉、斎藤孝

明治維新の人材百花繚乱。この時代の人物で誰が好きかと尋ねれば、その人物のおおよそがわかるというものだ。ある友人は勝海舟と答え、ある友人は渋沢栄一と答え、ある友人は坂本竜馬と応える。

自分の場合は、文句無く福澤諭吉である。もちろん、壱萬円札の図柄だからではない。時代を見据え、知識や知恵や情報をかき集め、次の行く先を示していく。そんなスタイルが最高にかっこいい。

この本はそんな彼のスタイルを凝縮したものだが、斎藤さんがありがたいことに現代語訳してくれた。かなり読みやすい。

内容的には、啓蒙書というか自己啓発本というかという感じで、題名の通りの内容である。立身出世のすすめ、成功のすすめ、独立心のすすめといっても良いかもしれない。古典の常であるが、時代を超えてもアクチュアリティがある。今書かれた本といっても信じられる。そんなレベル。





気になった部分の抜書き
「わが慶応義塾で、すでに技術として学問をマスターしたものは、そこで得たものを実際の文明の事業で実行しなければならない。商売にはつとめなくてはならない。法律は論じなければならない。工業は興さなければならない。・・・著述、翻訳、新聞の発行、およそ文明の事業は、ことごとくわが手におさめて、国民の先を行き、政府と助け合い、官の力と民の力のバランスをとり、一国全体の力を増す。」

実学重視。慶応の精神を感じます。

「およそ世の中に、何がうまい商売かといって、税金を払って政府の保護を買うほど安いものはない。(したがって、税金は気持ちよく払え)」

なかなか面白い考え方。

「保護と指図とは、究極的には一緒のものなのだ。また、その範囲はぴたりとして寸分の狂いもあってはならない。保護が至るところには、指図が及び、指図が及ぶところには、必ず同時に保護が至るところでなければならない。」

教育にせよ、政府の保護にせよ成り立つ論理。個人的には、一番感銘を受けた。責任と権限がバランスすることとも言い換えられよう。

「栄誉や人望を求めるべきなのだろうか。そのとおり。努力して求めるべきものである。ただ、これを求めるにあたっては、相応のバランスをとることが重要なのだ。」

人間の欲を肯定するところが、福澤の魅力である。

「独立の気概のない者は、必ず人に頼るようになり、その人を恐れ、へつらうようになる。」

独立心を何度も説いている。サラリーマン化が強い現代にこそ、よりあてはまる格言。

「世界の土地は広く、人間の交際はさまざまだから、鮒が井戸の中ですごしているというのとはちょっと趣が違う。人間のくせに、人間を毛嫌いするのはよろしくない。(積極的に、交際をどんどん広げよ)」

交際を強調するのも、慶応をつくった福澤ならでは。やはり、あの学校は創設者の精神がなんだかんだいって、継承されている気がする。