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オブジェクト思考ブロギング

「ポスト消費社会のゆくえ」 辻井喬・上野千鶴子

セゾングループの総帥であった堤清二上野千鶴子の対話編。上野千鶴子は、「セゾンの発想」という本も上梓しているくらいで、セゾンに対する知識はとても深い。

基本的には、セゾングループの栄光と挫折への回顧と反省、分析である。セゾンという「文化」をリアルタイムで体験していない身としては、一時期ある企業が、消費社会を牽引するかのようにガンバッテいたのだなぁということを知って感銘を受けた。

糸井重里を起用してイメージ広告の走りとなる一連の広告をつくったり(今見ても良い広告だわ)、無印良品といったライフスタイルブランドをつくったり(ライフスタイル全体をまとめて見る生産ブランドって意外と少ないが、特に当時はほぼなかったのでは)、LOFTなんていう店舗で時代のお洒落感覚を醸成したり、渋谷の街自体を再開発しちゃったり、セゾン美術館を通して現代アートを日本に紹介したり。消費と文化の接点で、ここまで影響を及ぼした集団っておそらく稀有である。他にもあるかな・・・リサーチだな。

今の時代と重ねると、森グループが結構似ているかも。消費と文化の接点で、エッジの効いた仕事をしているという意味で。上野さんが、「新興ブルジョワジーは、最先端のアートで身を固めて、旧来のエスタブリッシュメントから差別化する(挑戦する)」(ピエール・ブルデュー)といった趣旨のことを言っていたが、まさに森美術館。そして、昔のセゾン美術館。六本木の再開発、テナント商売(パルコが成功したテナント商売であることを想起)をセゾンに重ねることもできるだろう。そんな彼らが、僕は好きである。


ただし残念なことに、「ポスト消費社会」がどうなるとか、どうしたらいいとか、どうあるべきだとかいった話はほぼ皆無。消費社会後の社会像に関しては、見田宗介現代社会の理論」(岩波新書)とかの方がまだ提言がある。えにぃうぇい、自分で考えろってことですね。