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サブジェクト⇔オブジェクト思考ブロギング

「いきの構造」 九鬼周造

江戸時代の町人で生まれた独特の美意識である「いき」という感覚・概念を哲学者である九鬼周造が分析したもの。留学時ハイデガーベルグソンに認められてたという才人らしく、分析での包丁さばきが華麗で美しい。外人向けの文化論として書かれている。

彼は、外見に対して与えられる「いき」という形容を、まず意識構造として分析する。要約すると、町人である男女同士、特に遊郭で生まれた「媚態」が、武士的な理想主義とも言える「意気地」と、仏教的な非現実性・解脱的な「諦め」によって昇華されたものが「いき」である、と。具体的には、異性への誘惑・挑発をベースにしているが、決して卑屈にはならず、プライドを高くもっており、かつ、人生の虚しさを知る諦念とともに生きている、そんな感じか。

また、上品ー下品、派手ー地味、意気ー野暮、甘味ー渋味という4本の補助線を用意し、これらを軸にして、「いき」の位置づけを行っている。有名な表紙の図にある通り。

後半は具体的にどんなものが「いき」か説明しており、例えば、縦縞、くすんだ色特に紺・茶・灰色、春より秋が「いき」である、と。なんでそいうなのかも、上記のフレームワークで説明してくれる。

昔の本なので、やたら面倒くさい感じもするが、美意識を言葉で説明するのは至難のこと。華麗にやりきったのはなかなかすごいと思う。1930年にこういった本が生まれたのはこの国には幸い。新渡戸の武士道は一種の倫理本だが、こちらは美学本である。

ダンディズム、わび・さびといった概念もいい解説本があるといいのだが。

西洋の男性美意識に関しては、さしずめこのあたりが古典的解説本か

バルタザッレ・カスティリオーネ 「宮廷人」
ディック パウンテン  「クール・ルールズ