「木のいのち 木のこころ 天・地・人」 西岡常一
友人に紹介されて読んだ本。
法隆寺宮大工棟梁(法隆寺付きとしては最後の棟梁)のエッセイというか口述というか。
いかに木の性質をいかして構造を組んでいくかとか、口伝で伝えられていることがとても重要だとか、機械じゃだめで手にしかできないことが多いとか、徒弟制度にも利点があるとかいったことが書かれている。
言葉にリアリティがあって、おそらく心の底から信じているであろうことを言ってるんだなと思わせる文章。職人という存在がまったく身近ではなくなり、ややもすると少し下に見られがちだが、凡百の本より、ぐっとくる内容だった。一言で言えば感動に近いか。しかし、あまりにも彼と自分の生きかたが違うから、安易に感動したとは言いにくい。
印象に残ったのは
「伽藍を建てるときは、木ではなく山を買え」
木だけ問屋から卸すだけだと、生育していた様子がわからず、木の性質をつかめなくなる。山ごと買えば、木の生育していた様子がわかり、木の癖をつかみながら建てられると。
「木が育った方角のまま、木を組む」
南に立っていた木は南に、北に立っていた木は北にというように。方角に応じて局地的な気象が変わるが、それに適応したものをそのまま使うのが良いと。
「木は育った年の数だけ構造として生きる」
200年生きた木は200年構造として耐えるそうな。
他にも知恵が満載されていて、なるほどと思うことばかり。木造というと、寿命が短い印象だったが、しっかり材料を選んで組めば、RCより長くもったりするわけだ。
OAZOのマルゼン1階の名著コーナーにも置いてある。てか、あのマルゼンの名著コーナーは素敵です。あと2階の21世紀への古典コーナーも。