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オブジェクト思考ブロギング

「脱「ひとり勝ち」文明論」 清水浩

電気自動車Eliicaの開発者、清水さんの本。 「太陽電池+電気自動車」という社会への「マニフェスト」。 難しい話をせず、ビジョンを語り、多くの人を自らの夢見る方向へと誘うような文章。明快で、明るくオプティミスティック。読んでるだけで楽しくなって…

「超・美術館革命―金沢21世紀美術館の挑戦」 蓑 豊

著者の略歴は http://spysee.jp/%E8%93%91%E8%B1%8A/1315351/参照 金沢21世紀美術館を立ち上げ、動員数という意味で成功に導いたお話。新書という形式に合った、手軽ながら興味深い内容で、個人的にはなかなかのヒット。 著者は骨董商で数年丁稚奉公すること…

「マグネシウム文明論」 矢部孝 ・ 山路達也 著

404 Blog Not Foundの書評を見て手にとった。 (http://blog.livedoor.jp/dankogai/) ざっくり言うと、化石燃料の代わりにマグネシウムをエネルギーの通貨として使用しようという提案。 マグネシウムの利点としては、・海水に大量にあり、化石燃料よりも貯蔵…

オルテガ vs リップマン

20世紀に入り、「大衆の時代」になるにつれ、知識層から様々な反応が起きたが、このオルテガ「大衆の反逆」(1930年)とリップマン「世論」(1922年)のコントラストはなかなか興味深い。 スペインに生まれ、ジャーナリストの父を持つ哲学者オルテガ*1は、大…

「ウェブ×ソーシャル×アメリカ――〈全球時代〉の構想力」 池田純一

帰宅すると、まずFERMAT - Communications Visionary -をチェックするという習慣。そのウェブコンテンツの作者が新書を出したというのだから、いの一番に購入した。一言で言うと、オススメです。ほとんどの本は買わずに図書館で済ますのだけど、これは久しぶ…

「ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系」 岡本真、仲俣暁生 (編集)

電子書籍をめぐる「本」業界のお話。ブックビジネスといいつつも、半分くらいは図書館の話で、この本の面白いところは、図書館と書店を一元的に考えているところ。図書館を論じている本は数あれど、このようなポップな体裁で、「ビジネス」として扱っている…

ドラッカーの継承

ドラッカーが流行っているとのことで、昔の本を引っ張り出してみた。初期の「産業人の未来」が一番気に入っている。1990年以降の著作は、高齢なこともあり基本的に焼き直し感は否めないが、後半の著作になるほど、「今後の課題」みたいなものの言及があって…

(再掲)「課題先進国 日本」 小宮山宏

(2008年10月05日の記録を再掲)最近は救急科を回っているので、休日や夜にまとまった時間がとれる。おかげさまで、本を読んだり映画を見たりする時間が前より確保できている。先日は、現東大総長の小宮山さんの本を読んでみた。2007年発行の「課題先進国 日…

現代建築家コンセプトシリーズ

簡素な体裁ながらも、気持ちの良いデザインと文章。晴れた秋の休日に、微風を楽しみつつくつろぎながら読むには最適な本。 シリーズの中では、藤本壮介氏とアトリエ・ワンのものが良かった。内容もさることながら、特に「コンセプト」というものをしっかり提…

丸の内のエドワール・マネ

三菱一号館美術館という名の施設がオープンし、その第1号イベントとして、マネ展が企画された。丸の内は現在東京で最も気持ちのいい場所のひとつだと思われるが、行く度に魅力が増しているように感じる。 今回は、昔のレンガ造りの洋風建築を復古した建物を…

「だまされないための年金・介護・医療入門」 鈴木亘

アマゾンの秀逸なレビューにもあるとおり、「現行の賦課方式を清算して積立方式へ再移行せよという、世代間の不公平および経済的効率性に重点をおいた社会保障改革論」(そのまま引用、本書の問題点もレビューが参考になる) 賦課方式*1では、当然ながら現在…

家庭画報

最近よく家庭画報をパラパラめくっている。家庭といいつつも、もはや完全にスノッブな感じであるが、見てて読んでてなかなか楽しい。 日本の主婦文化というのはなかなか興味深いものである。ほとんど消費を旨とし、生産が主眼になることはないが、そこで繰り…

"After America" ポール・スタロビン

アメリカのプレゼンス低下に伴い、色々なアメリカ本が出されているが、これはユダヤ系東海岸アメリカ人ジャーナリストが書いた、直球中の直球。東海岸で育ち、アメリカらしい雑誌社で働き、という人が書いたもの。移民系であるファリード・ザカリアの「アメ…

「帝国以後」 エマニュエル・トッド

ひさしぶりに衝撃を受けた。これは凄い本だ。 2002年に書かれた未来展望を今読み返すのは明らかにタイミングが悪いが、予測のベースにある方法論や考え方という意味では、未だに色あせない価値がある。 著者のエマニュエル・トッドは金融危機を予測した人物…

「Studies in Organic」 隈研吾建築都市設計事務所

隈研吾に関しては、自然素材を用いるという、素材の点でこれまで、興味深いと思っていたが、最近の興味は、「環境」、「生命」という視点に移動しているらしい。これまではアンチテーゼ的な主張が多かったが*1、メインストリームな(穿った言い方をすれば"流…

「メッテルニヒ」 塚本哲也

メッテルニヒとは、19世紀オーストリア帝国の外相として、ナポレオンに対抗する同盟をまとめた貴族政治家*1で、元新聞記者の著者がジャーナリスティックにまとめた伝記である。 メッテルニヒの功績としては、↑の通り、ナポレオンとつかず離れずの距離を保ち…

「世界を変えるデザイン − ものづくりには夢がある」 シンシア・スミス

プロダクトデザインというと、既にできあがった製品のソフィスティケーションというのが、暗黙の前提になりがちだ。特に日本のような物が溢れている世界では。 そういった前提に慣れている人(例えば自分)には、なかなかインパクトのある本である。そもそも…

「ザ・フィフティーズ」 デイビッド・ハルバースタム

ベスト・アンド・ブライテストなる本でベトナム戦争時の政権内幕を詳細に綴ったハルバースタムが、50年代アメリカの全体史を組み立てる。アメリカ、そして世界が戦後世界の構築へと過ごした「現代の始まり」を。 ジャーナリストとして、様様なテーマでノンフ…

「最新脳科学で読み解く 脳のしくみ」 サンドラ・アーモット

最近読んだ一般向け脳科学本の中で一番面白かった本。わりと売れてるみたいな。 内容紹介にある通り、色んなトリビアが載っていて、単純にエンタメとしても面白い。しかも、かなり出自のきちんとした著者なので、(間違いが多少あるかもしれないけれど)内容…

「JAPAN CAR 飽和した世界のためのデザイン」 原研哉

かつてカルロス・ゴーンは「フランス人はコンセプトを考えるのは得意だが、オペレーションが不得意。日本人はオペレーションは得意だが、コンセプト・メイキングは苦手。この二つの長所を併せれば、補完的な関係になる。」といって、ルノー・日産連合の美点…

本郷のホームカミングデイに行った

特別フォーラム「新技術が切り拓く日本の未来」というやつを聴講。予想通りリタイヤ後数年以上の高齢者が多かったが、内容は素晴らしかった。小宮山元総長が締めくくりに「生まれて一番良かったシンポジウム」と言ったのは、明らかに誇張だが、一般向けの中…

「住む。」という雑誌

たてもの園でこの雑誌のことが良く思い浮かんだ。 季刊誌 「住む。」 農山漁村文化協会http://www.sumu.jp/ 和系の素材をベースとして、モダニズム的な簡素さと洗練を兼ねたインテリアや小物や食器や建築を提案した雑誌で、民芸的な発想とも近い。生活文化を…

「世界を変えた6つの飲み物 - ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの歴史」 トム・スタンデージ

嗜好品な飲み物の歴史を、世界史的な出来事を絡めて語る。いわゆる正統な世界史的知識もしっかり踏まえつつ、個々の飲み物(ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラ)の歴史も詳述されている。読後には、いかに嗜好品的な飲み物が人類に大切であり…

「エルメスの道 (中公文庫―コミック版)」  竹宮 惠子

こんなマンガがあるらしい。エルメス社の新入社員必読とか。これでとりあえず大まかな歴史を知ってくれ、と。しかも、エルメス社が公式に認めているエルメス本は世界でもこれだけとかいう話。 堅いイメージの企業だけど、意外と柔軟な姿勢ですね。冒頭の5代…

「産業人の未来」 ピーター・ドラッカー 

(2007年10月7日の再掲) 先日ドラッカーの「産業人の未来」(1942年)を読み終わりました。「社会における人々の位置づけと役割」、「(社会で中心的な)権力の正統性」を切り口に、歴史を振り返りながら(特に全体主義批判を通して)、産業資本主義社会に…

「ドラッカー20世紀を生きて―私の履歴書」 ピーター・ドラッカー

日経新聞の「私の履歴書」から編集した本。彼はなかなか自分のことを記そうとしないタイプの人なので、伝記的な作品はこれまでほぼ皆無だった。なので、彼の思想とか考え方を、彼自身の人生と引きつけて考える際、この伝記的な資料は、短いながらも貴重と言…

「新しい資本主義」 原丈人

全体として素晴らしいが、特に感銘を受けたのは、彼がビジョンを持ちながら、投資をしていく戦略を描いた部分。 コンピュータはその名前通りcomputation(計算)をする機械である。したがって、ウェブやメールといったコミュニケーションに最適なわけではな…

「知識人とは何か」 エドワード・サイード

これからの知識人を支えるものは、アマチュアリズムであるという議論が印象的だった。 ミシェル・フーコーが「これからの知識人は、全体を見通す立場に立てることはないだろう。細分化された専門家達にとって代わられる。」といった趣旨の発言をしていたが、…

「アースダイバー」 中沢新一

地形によって人の生活は変わる。かなり文明の進んだ土地でも、地形によって培われた太古からの文化は容易には変わらない。東京も然り。東京には色んな街があって、その違いがとても楽しいけれど、地形が違いを生んでいるといえなくもない。 アースダイバーは…

「建築家 安藤忠雄」 安藤忠雄

極めてスタンダードな安藤忠雄入門。ある程度彼について知っている人も、改めて通史的に見ることができるという意味で、何かしら新しく得るものがある。 作品と人生を通時的に見ると、ひたすらに「スタンダードさ」が浮き上がってくる気がする。題名に「建築…